河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(四)乾鮑の說(その8) 【図版1】
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの左ページ。画像は、底本の国立国会図書館デジタルコレクションの「印刷」で高解像度のものをダウンロードし、例によって、精密に汚損を清拭した。本日未明から始めたが、その清拭だけに四十分かかった。特に、製品の軟体部の腹足部の底部分は、製品として可能な限り、綺麗に仕上げるのが基本鉄則であるから、その部分の、陰部分(やや変色したものの表現を含む)ではない、推定される汚損は小さなドットまで、注意深く取り去った。特に、アワビの成体なら未だしも、製品化されたものの体表に、極めて細い針狀部分、或いは、根の細い先に球形や四角の突起様の物があることは、通常はないと推定出来るので、非常に小さなそうした部分は、汚損として、細心の注意を以って消してある。但し、今までにもしばしば見えた、印刷上の図内の白線状の摩擦痕などは、そのままにする他なかった。かなり、自信の持てるレベルには至っている状態に綺麗にすうる能力を私は保持していると思っている。現に、上のリンク先のものを同大にして比べて見て戴ければ幸いである。今まで通りの記号・体裁を問踏襲し、キャプションを電子化し、必要と思われる注を附す。製品のモノクローム画像で、手書きものであるため、種の同定は、産地等で可能な限り、種或いは種群を示す。前回の注で述べた通り、総ての図版を終わるのには、かなり時間が必要であることが確実となった。記号等は本文に準じて、私のやり方で添えてある。]
【図版1】
[やぶちゃん注:本図集は、今までのような上罫線の上への題名は、一切、掲げられていない。順番は、基本、上から下、次いで、左方向へ配する。]
■「明鮑《めいはう》」
「安房國《あはのくに》」
「上品。『またかひ』にて、
製するもの。」
[やぶちゃん注:冒頭に掲げるに相応しい、非常に大きな、しかも形も美しい最上の製品個体である。本図は以上の「またかひ」によって、アワビ中の最大種で最も美味とされる、
腹足綱直腹足亜綱古腹足上目原始腹足目ミミガイ科アワビ属マダカアワビ(眼高鮑) Haliotis madaka
と判明する。「(その5)」で注してあるので、見られたい。]
■「白乾《しらほし/しらぼし》」
「陸中産」
[やぶちゃん注:第一図の二番目に配されていること、産地が陸中で、形状が楕円形を成していることから、アワビ属クロアワビ(黒鮑) Haliotis discus discus と推定される。但し、腹足を下にしたもので、全体に黒々としており、見た目は、あまり製品としての質は、よくないように見えてしまっている。
「白乾」「(その6)」の注(初めの方)で既注済み。]
■「明鮑《めいはう》」
「三番」
[やぶちゃん注:マダカアワビだろうが、製品落ちの下品(かひん)である。]
■「一番鮑《いちばんあはび》」
[やぶちゃん注:形状から見て、マダカアワビの最上製品であろう。]
■「二番鮑」
[やぶちゃん注:三方向から三図。一番上に、やや斜め右上方向から腹足部から描いたもの、その下に、同個体を腹足を引っ繰り返して置いた横からのもの(但し、スケールは前より小さい)、左下方に、一番上の左端のマダカアワビの口吻部を上に立てたもの(さらにスケールが小さい)が描かれてある。]
■「灰鮑《はひはう》」
「北海道渡島國(としまのくに)産」
[やぶちゃん注:二図。腹足を下にしたものが上図で、腹足側をこちらに向けたものが下図。「灰鮑」「(その4)」を見よ。その注の引用で、クロアワビやエゾアワビが用いられるとある。産地から考えると、クロアワビか、亜種エゾアワビ(蝦夷鮑) Haliotis discus hannai のどちらかは、判断出来ない。]
■「白乾一番鮑」
[やぶちゃん注:「一番」であるから、マダカアワビであろう。]
■「無番鮑」
[やぶちゃん注:無番とするからには、製品として最下級となるが、見た目は、そのようには見えない。産地も示されていないので、万事休すだが、縦列から見ると、前と対比して最下品として配しているようにも見え、その場合は、マダカアワビとなる。]
■「古代製法 薄鮑(うすあはひ)」
[やぶちゃん注:「うすあはひ」はママ。
「薄鮑」は「(その2)」に、『出雲、石見、長門、肥前、日向に『薄鮑(うすあはび)』あり。』とあり、恐らく、これは、アワビを湯通しにして、後に乾したものであろうと推測する。薄切りにして、食する。ただ、真っ黒な塊(二図)で、製品としては、よく認識出来ない。種も不明であるが、以上の地名を考慮すれば、マダカアワビであろうかとは思うものの、よく判らない。識者の御教授を乞うものである。]
■「熨斗鮑(のしあはび)」
「伊勢産」
[やぶちゃん注:長大な正しく熨斗のものであるので、一応、最大種であるマダカアワビ製のものと推定しておく。]
■「灰鮑」
「後志國《しりべしのくに》産」
[やぶちゃん注:この図からはよく判らないが、産地からエゾアワビであろう。]
■「天塩國《てしほのくに》
増毛《ましけ》産」
[やぶちゃん注:「増毛」北海道増毛郡増毛町。ここは、現在もエゾアワビ名産地であるから、決まりである。]
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