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2025/12/07

河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(四)乾鮑の說(その6)

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの右ページから。]

 

『明鮑』【鼈甲《べつかう》】・『灰鮑』【白乾《しらほし/しらぼし》】とも、品位、數等ありて、三番【上】・二番【中】・壹番【小形・下】)の三段あり。三番中(ばんちう)に大・中・小、貳番中に大・小の別、あり。『明鮑』は一《いつ》に『鼈甲』と唱(とな)ひ、『本鼈甲』・『馬爪(ばず)』等《とう》の差(たがひ)あり。

[やぶちゃん注:「鼈甲」上質なアワビを乾燥させたもので、肉部の腹足下部が、飴色(あめいろ)に透き通っているものを、鼈甲色に擬えた「明鮑」の異名。

「白乾」アワビを茹でてから天日干しして作られる高級乾製品(乾鮑:中国語“gānbào”「カンパオ」) を指す「灰乾」の異名。

「馬爪(ばず)」ネット検索・国立国会図書館デジタルコレクション検索でも掛かってこない。但し、馬の蹄(ひづめ)の裏(地面に接する側)の形は、乾鮑の形状に、よく一致する。その様態が、今一つ綺麗でない黝(くろ)ずんだものを、かく、呼んだものであろうという推理は容易に出来る。但し、後の本文(「九」ページの最終行)で、『馬爪色』と出、そこには、ルビを『ばづいろ』と振っており、そこから考えると、この「ばず」は「ばづ」の誤記・誤植と断じてよいと考える。

 

『明鮑』は、製法も、地方によりて、其法、大同小異ありと雖ども、其中(そのうち)に於て、最も良好の方法を擧ぐれば、鮑肉(あわびにく)を、殼より放《はな》ち、鮑百個に、食䀋、凡そ五、七合許(ばかり)の割を以て、殼へ付(つい)たる方に、𭢀(なすり)つけ、一晝夜を過きて[やぶちゃん注:ママ。]、竹笊(たけざる)にいれて、海水に浸(ひた)し、足を以て、踏(ふみ)、よく汚物(をぶつ)をさり、而して、沸湯(にへゆ)に投じ、煑熟(しやじやく)し、後《のち》、淡水(まみづ)にて洗ひ、竹簀(たけす)に並らべ、水分を飛散(ひさん)せしめ、大陽(たいよう)[やぶちゃん注:漢字・ルビともにママ。以下、同じ。]にて晒すこと、二、三日にして、石爐(せきろ)の炭火(すみび)に藁灰(わらばい[やぶちゃん注:ママ。])を覆(おほ)ひ、培乾器(ほいろ)を、其上に置き、上下(うへした)、轉換(とりかへ)すること、數回(すたび)の後(のち)、大陽に晒し、再び、火力を與へ、全く、乾くを、まちて、箱に收(をさむ)へし[やぶちゃん注:ママ。]。本邦人(ほんほふじん[やぶちゃん注:ママ。])の『削(けづ)り鮑(あはび)』となして食するものには、生乾(なまぼし)を、よろしとすれども、淸國に輸出するには、充分に乾燥すべし。しからざれば、需用地に達せざるうちに、腐敗を、きざし、價(あたひ)を低落(おと[やぶちゃん注:二字へのルビ。])せしめ、國產の名聲を失ふに至れり。是、廣東(カントン)地方等(とふ[やぶちゃん注:ママ。])に於て、美麗良好なる『明鮑』を欲(ほつ)せずして、粗造なる『灰鮑』の方を、高價(たかね)にて、好み、買取(かひと)る所以(ゆゑん)なり。

[やぶちゃん注:「培乾器(ほいろ)」「コトバンク」の講談社「食器・調理器具がわかる辞典」の『ほいろ【焙炉】』に、『①茶葉・薬草・海苔(のり)などを下から弱く加熱して乾燥させる道具。元来は木枠や籠(かご)の底に厚手の和紙を張ったもので、炭の遠火で用いた。伝統的な製法では、茶は蒸した茶葉をこの上で手で揉みながら乾燥させる。こんにちでは電気やガスを用いた熱源の上に同様のものを備えた、手揉み工程の作業台もいう。』とあった。アワビの「ほいろ」は画像で見出せなかったが、古風の茶のそれが、練馬区立石神井公園の「ふるさと文化館」の「所属アーカイブ」の「焙炉」で見ることができ、また、里成子さんのブログ「MORE THAN WORDS」の「焙炉(ほいろ)」があり、近代型のものを見ることが出来る。そこには、『出雲特産の板若芽や海苔を炙るもので、ほんのりと温められた若芽をご飯に揉んでかけると、優しい塩気が食欲をそそります』。『昔は火鉢に置いたものですが、今は白熱灯で、炙り過ぎない工夫がされています』。『改築時の障子の桟で作られた女将のアイディアだそうです』。『出雲弁で「おい、そろそろ晩ご飯だけん、ほいろにめのは入れちょけや。」』『(訳 「おい、そろそろ晩ご飯だから、わかめや海苔などの乾燥機にわかめを入れておけよ。」)』という解説があった。]

 

灰鮑にも數法ありと雖ども、其最も要(かなめ)とするは、乾燥(ほしかた[やぶちゃん注:「乾し方」の当て訓であろう。])にあり。北海道粗造品の、他國產より、高價(たかね)を占(しむ)るものは、乾しかたのよろしきによるのみ。他國產も、北海道の如く、乾燥(かんそう[やぶちゃん注:ママ。])せば、極めて良價を得べく、北海道產をして、他國良製品の如くならしめば、一層の良價を得るや、必(ひつ)せり。故に、茲(こヽ)に、灰鮑の尤(もつとも)適切なる方法を擧ぐれば、鮮肉(なまあはび)百顆(くわ)に鹽三合許(ばかり)を以て、漬け、暑中は、二日間、寒中は、四日間を經て、淡水(まみづ)にて洗ひ、沸湯(にへゆ[やぶちゃん注:ママ。])に投じて、煑沸(にわか)し、復た、淡水にて洗ひし竹簀に並べ、水分を飛散せしめ、太陽にて、乾かすこと、五日乃至(ないし)十日間にして、箱に收め、蓋(ふた)を覆ひ置き、自(おのづか)ら、表面に白粉(しろこ)を發せしむなり。

[やぶちゃん注:「表面に白粉(しろこ)を發せしむなり」複数の干し鮑業者の記載を確認したところ、「旨味が滲み出たもの」、及び、「塩分」と記し、黴(かび)ではない由の記述があって、「最良の状態である」と記してあった。]

 

兩製共に、日光を借り、乾製するの習慣(ならはし)なりと雖ども、若(も)し、霖雨(ながあめ)に遭ふときは、糸に繫(つな)ぎ、急に焚火(たきび)の上に掛け、薰(いぶ)し、燥(かわか)すが故(ゆゑ)に、其色、變じて、暗黑色(まつくろいろ)となる、あり。三陸・北海道に於ては、日光に乾かすに、鮑の中心を、蔓(かづら)、或(あるひ)は、蒲葉(がま)を以て、貫(つらぬ)くの弊(へい)あり。此等の製法の如きものは、價格の下(くだ)る、實(じつ)に夥(おびたヾ)し。現に、明治十五年中、橫濱其他、各港の貿易上に就(つい)て見るに、百斤[やぶちゃん注:60㎏。]の價(あたひ)、僅(わづか)に貳拾三圓にして、千葉縣製『明鮑』、及び、北海道・三陸等の『白乾上製(しらぼしじやうせい)』の如きは、百斤五拾圓、乃至、五拾五圓に昇り、其差(そのたがひ)、最も甚(はなはだ)し。然(しか)れども、北海道の如きは、竹簀(たけす)に竝べ乾すときは、烏(からす)の啄(はむ)ところ、夥しく、爲(た)めに、之れが、番衞(ばんにん)等に費(つひや)すこと、多く、寧(むしろ)、賣價(ばいか)は、幾分の廉(やすね)なるも、斯(かヽ)る煩-冗(わづらはしき)を免(まぬか)るゝに、若(し)かず、とて、舊慣(きうくわん)の蔓吊乾(かづらつりぼし)を、改めざるあり。亦、靑森縣下にて、貫穿(ぬきとうし[やぶちゃん注:ママ。])の舊法を改めざるが如き、共に遺憾の至りなり。千葉縣の如きは、近時、焙爐(ほいろ)に掛け、炭火(すみび)を以て、之を乾製するの方法に改め、上製をなすもあり。

[やぶちゃん注:「蔓(かづら)」平凡社「世界大百科事典」の「カズラ(蔓//葛)」に拠れば、多数の全く異なった植物である『つる草の総称。ヒカゲノカズラ』(ヒカゲノカズラ(日陰の鬘・日陰の蔓)植物門ヒカゲノカズラ綱ヒカゲノカズラ目ヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ属ヒカゲノカズラ Lycopodium clavatum )・『テイカカズラ』(双子葉植物綱リンドウ目キョウチクトウ科キョウチクトウ亜科 Apocyneae 連テイカカズラ(定家葛)属テイカカズラ Trachelospermum asiaticum )・『スイカズラ』(マツムシソウ目スイカズラ(吸い葛)科スイカズラ属スイカズラ Lonicera japonica )・『サネカズラ』(被子植物門アウストロバイレヤ目Austrobaileyalesマツブサ(松房)科サネカズラ(実葛)属サネカズラ Kadsura japonica:以下では、知られる種は、一部を除き、学名追記をしない)『などは』、『その例である。上代つる草を髪に結んだり,巻きつけたりして頭の飾りとし,これを鬘(かずら)といった。そのためつる草を〈かずら〉と称するようになったという。鬘は〈髪つら〉の略,〈髪つら〉の〈つら〉は〈つる〉の古名で,長く連なるので〈つら〉といったものらしい。ただし,のちにはつる草に限らず,ヤナギ,タチバナ,サクラ,ウメ,ユリ,ショウブ,ムラサキグサ』(これは、蔓性植物の代表の一つである正式和名フジ(藤)の異名であろう。事典としては、甚だ、よろしくない記載である)『,イネ,藻などの植物も鬘に用いられた。このように,草木のつるや』、『茎や花などを取って髪飾りとすることを〈鬘く〉』(「かずらく」、歴史的仮名遣「かづらく」)『といい,もともと,植物の盛んな生命力を人間の体に取り入れようと願ったことから始まった』。『地方により特定の植物,例えばテイカカズラ(岡山),クズ』(マメ目マメ科マメ亜科インゲンマメ連ダイズ亜連クズ属亜種クズ Pueraria lobata subsp. lobata )『(香川)などを単に〈かずら〉と呼んでいる。また蔓水,蔓壺というと,それぞれサネカズラ(美男蔓)』『の粘液と』、『そのつるを浸すに用いる壺のことである。』(サネカズラの粘液は奈良時代に整髪料として使われていた)とあった。

「蒲葉(がま)」単子葉植物綱イネ目ガマ科ガマ属ガマ Typha latifolia の葉や茎は、莚(むしろ)や簾(すだれ)の材料として使われてきた。

「貫穿(ぬきとうし)の舊法」不詳。前後から、アワビのど真ん中を穿孔し、そこに太い蔓や繩を通して、軒端に乾し吊るすといったような、損壊リスクが高まる乾し方を言っているようではある。]

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