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2025/12/16

河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(四)乾鮑の說(その10) 【図版3】

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの左ページ。画像は、底本の国立国会図書館デジタルコレクションの「印刷」で高解像度のものをダウンロードし、例によって、精密に汚損を清拭した。詳しい図版処理の仕儀は「(その8) 【図版1】」の冒頭注を参照されたい。]

 

【図版3】

 

Awabi3_20251216105401

 

■「肥後國《ひごのくに》産」

   「表」

  「仝」[やぶちゃん注:「同」の異体字。]

   「裏」

[やぶちゃん注:表・裏の二図。なお、このページと、次のページは、明らかに、今までの作図者とは異なり、塗り潰しに近い黒地を用いていない。そのため、細部はよく見える。しかし、先の黒過ぎである瑕疵はあったものの、リアルな質感があったのに比して、全体に稚拙な感じが漂っており、干し鮑のボリュームや、何より、高級感が全体に認められないのが、ちょっと、残念ではある。

「肥後國産」熊本県で獲れるアワビは、にクロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビで、特に現代では、高級品とされるクロアワビの養殖も盛んである。肥後産としてページ・トップに配していることと、形状から見て、クロアワビとしてよかろう。]

 

■「薩摩産」

[やぶちゃん注:同じく、クロアワビとしておく。]

 

■「肥前産」

  「仝」

   「側面」

 

[やぶちゃん注:二図。最初の図は、今までの図ではないもので、串を、厚みから見て、恐らく頭部上に貫いた串状のものを描いてあり、今までにない恐らく右手からの側面図である、左には腹足の内側の、有意にこんもりしたものが描かれてある。やや上から斜めに見下ろした全体像であるため、全体の形状が判らないのだが、推測するに、全体は、かなり潰した円錐の形であるように推定出来る。その推定形状に最も合う、殻も肉も有意に丸みを帯びるメカイアワビを候補としておく。「側面」図は、どうしたら、前の製品を真側面から描いたら、どうなるのか、私にはよく判らない。方向としては、左方向でよく発達し、その外套膜の波型、さらに、左手で肉部が内側に大きく湾曲して高くなっていることから、左が頭部であると始めは思ったが、肉部の右側上部の方が、遙かに高く厚いから、頭部は右であろうと結論した。ともかくも、第一図を、ただ串を抜いたものの側面ではなく、製品を上部に手を加えて変形したものであることは、最早、確かである。

 

■「佐渡産」

[やぶちゃん注:佐渡で知られた高級品はクロアワビである。形状も一致する。]

 

■「越後産」

[やぶちゃん注:新潟も同然であり、形状からもクロアワビに比定して良いだろう。]

 

■「志摩産」

[やぶちゃん注:三重県ではクロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビの三種が水揚げされる。形状と製品上品から、クロアワビであろう。]

 

■「壹岐《いき》産」

[やぶちゃん注:形状からクロアワビであろう。]

 

■「對州《たいしう》産」

[やぶちゃん注:「對州」対馬国の異称。やはりクロアワビとしておく。]

 

■「とこぶし薄片試製」

[やぶちゃん注:図もトコブシの大きさに合わせて、ごく小さく、載る。原本では「とこぶし薄」とあって一字ほど空いて、しかも左行に「片試製」とあるのだが、後者は、右下方に前の行の図があるために、移しただけであり、字空けは不自然だが、私は、文字列八字で一単語と判断して、かく、した。これは無論、ミミガイ科アワビ属基亜種フクトコブシ(福床臥)亜種トコブシ Haliotis diversicolor aquatilis(或いは、ミミガイ科トコブシ属(或いはミミガイ属 Haliotis )基亜種フクトコブシ亜種トコブシ Sulculus diversicolor supertexta )を茹でる・乾す等の保存調整をした肉部を、薄片に、試験的に製品としてみたものという意味である。

 

■「薄片試製」

[やぶちゃん注:戸惑った図である。「とこぶし薄片試製」の左下部分を左罫まで、大きく占めており、しかも、前の「とこぶし薄片試製」品と、非常によく似た三個体くっ付いた描き方がよく似ているが、細部の形状はよく見ると、上編部分の形状が異なるので、別個体である。或いは、河原田氏が、前の図が、如何にも小さいのに難色を示し、改めて、別試験のそれを、ここに載せたようにも見える。そんなことは、実は、どうでもいいので、私が迷っているのは、これが、果して前と同じく「トコブシ」の「薄片試製」であるかどうかという点にあるのである。――而して、私の最終判断としては、以上のトコブシのそれの再別図掲載と判断する。もし、トコブシでなく、アワビ類を「薄片試製」したものであるなら、河原田氏は、必ずや、「鮑薄片試製」と記すはずだからである。

 

■「灰鮑《はひはう》」

 「渡島國《としまのくに》

   淺草村

      産」

 

 「表」  「裏」  「側」

[やぶちゃん注:「表」側と、「裏」側と、「側」面の三図。

「灰鮑」「(その4)」を見よ。その注の引用で、クロアワビやエゾアワビが用いられるとある。産地(次の注を見よ)から考えると、クロアワビか、亜種エゾアワビ(蝦夷鮑) Haliotis discus hannai のどちらかは、判断出来ない。図からも、差別化は不能である。

「渡島國淺草村」旧北海道渡島郡には「淺草村」は過去にも存在しない。調べたところ、「茂草村(もぐさむら)」ならあった。これは、その誤記と思われる。平凡社「日本歴史地名大系」に拠れば、『北海道』『渡島支庁松前町茂草村』で『現在地名』は『松前郡松前町字茂草』とし、『近世から大正一二年(一九二三)まで存続した村。近世は西在城下付の一村で、雨垂石(あまだれいし)村の北方にあり、日本海に注ぐ茂草川河口域に位置する。文化六年(一八〇九)の村鑑下組帳(松前町蔵)の当村旧跡の項に「茂草村古名はしののた、即しののた川之向ニ有之」とあり、茂草川(しののた川)を境に北側の「しののた村」と、後に発展してきた南側の茂草村とを合せて茂草村とよばれるようになったと考えられる。地名の由来は「地名考并里程記」に「夷語モムチヤなり。則、小柴の流るゝと訳す。扨、モムとは流れるといふ事。チヤは小柴の事にて、此川出水の節小柴の海岸へ流れ寄る故、此名ありといふ」とある。』とあった。北海道松前郡松前町茂草で、ここ。]

 

■「塩入製」

 「陸中産」

[やぶちゃん注:「塩入製」は本文にも出ない。塩漬けか、表面に塩が噴き出しているものを言うか、判断不能。産地からエゾアワビであろうと思われる。]

 

■「同國産」

[やぶちゃん注:図の位置から、同前以外の注は打てない。]

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