立原道造草稿詩篇始動 / (お時計の中には……)
[やぶちゃん注:本日、たまたま、何気なく――全く、殆んど意味もなく――国立国会図書館デジタルコレクションで立川道造で検索したところが!――今日! まさに今日!――一九七二年角川書店刊「立原道造全集 第二巻 Ⅱ詩集」が『送信サービスで閲覧可能』となって、視認出来ることが判明した!!! 以前、図書館で借りて、未電子化の詩篇を電子化したいと考えながら、諸プロジェクトを広げてしまった結果、やらず仕舞いで居たのだったが……私は――『……道造の魂が! 私にそっと囁いたに違いない!』と独りごちたのであった。さればこそ、これを底本として、私が未だ電子化していない彼の草稿詩篇を起動することとした。本篇は底本の『前記草稿詩篇』パートのここで、底本の注記はここ(左丁317ページ下段)で視認出来る。詩は無題のものもあるので、一応、仮題として最初の部分を、底本を真似つつ、二字下げ・丸括弧入りで、六点リーダを添えて示した。底本では標題はポイント上げであるが、当該原稿を見ていないが、立原は同じ大きさで書いている可能性が高いと考え、同ポイントとした。無論、底本同様に正字正仮名である。注は、比較的知られた語であっても、若い読者や、ネイティヴでない方を想定して、附してある箇所がある。
本篇の執筆想定は、注記に筆跡と使用されたインクから、『「卽興」および「一年を顧みて」『昭和7』(一九三二)『3月執筆想定・第六巻所収』(『雜纂』篇。ここと、ここで、視認出来る)『に類似点を求め得る』とし、『上限を』(根拠が示されてある)『昭和6年12月以後とし、下限を』(根拠が示されてある)『昭和7年3月以前と想定する』とある。]
(お時計の中には……)
お時計の中にはニハトリが住まない
お魚の內臟に燐寸で靑く燈を點けろ
圓周率を數へるために鼠を飼ひます
ピーターさんは海へ泳ぎに出かける
繪の描けない草は大體花を持たない
都會の電燈の色はボンヤリしてます
馬の足音に驚くのは垣根のバラです
手品をつかはない太陽はまんまるい
腹痛にきく藥はライオンの尻尾です
白い公園の白い噴水と白い馬が白い
都會の少女の肢はスツキリしてます
飛行機が墜落するので花は咲かない
ピーターさんの妹が山へ登りました
靑い空は粉々になつて碎けてしまふ
そこで月が胡桃の一つに化けました
お時計の中にはニハトリが住んでる
[やぶちゃん注:「燐寸」恐らくは「マツチ(マッチ)」と読んでいる。
「ピーターさん」不詳。軽井沢で知った外国人の友達がモデルかと思われる。
「描けない」音数律からは、私は「かけない」と読む。
「肢」「あし」であろう。]

