河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(五)鱶鰭の說(その8) / 鱶鰭の說~(図版3)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの左ページから。今回はここの左ページから。この図版のうち、「めしろさめ」の体側左の中央前部の縦の白い貫く線状部分が、如何にも、図を汚しているので、特異的に、目立たぬように、適当と思われる自然感覚になるように、黒で潰してある。]
【図版3】
■「かはきさめ」
[やぶちゃん注:以下は、上部にあるキャプション。位置が、甚だ、悪い。あたかも、二番目の図の一段目に続くようにしか、見えないからである。]
「大なる物、二丈。
子のうちは、二、三
尺にして、『白目鱣《しろめざめ》』といふ。」
[やぶちゃん注:これは、背鰭の形状に、甚だ、問題があるものの、デフォルメしてしまったととって、明らかに、
ネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ属アオザメ Isurus oxyrinchus
である。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページを見ると、「地方名・市場名」に『カワキ』があり、採集場所として『神奈川県江ノ島』とする。また、ブログ「(株)小田原魚市場」の「小田原地魚広辞苑」に、『カワキ アオザメのこと』とある。「かはき」「カワキ」の漢字表記は、国立国会図書館デジタルコレクションで調べてみたが、漢字表記は見当たらなかった。情報を求む。
「白目鱣《しろめざめ》」実は、この「鱣」を「ざめ」(鮫)としたのは、私の推定乍ら、勝手な読みであって、この「鱣」には、その訓は存在しない。この漢語「鱣」は音「テン・セン・ゼン」で、「廣漢和辭典」に拠れば、「テン」と読む場合は、第一義は「鯉の一種」とし、第二義は「大魚の名」で『かじき』(海産の条鰭綱アジ目ギンカガミ亜目Menoideiのギンカガミ科Menidae・メカジキ科Xiphiidae・マカジキ科Istiophoridaeの三種から成る)『に似て短く、肉は黄色』とあり、「セン・ゼン」で、「魚の名」とし、『うなぎに似た淡水魚。うみへび」とする。しかし、「辞典オンライン 漢和辞典」では、音「テン・セン」のみで、前者は『鯉(こい)の一種』、或いは、『ちょうざめ。魚の名。チョウザメ科』(硬骨魚綱条鰭亜綱軟質下綱チョウザメ目チョウザメ科 Acipenseridae)『の海魚」とし、「セン」では『たうなぎ。魚の名。タウナギ科の淡水魚。』(=条鰭綱タウナギ目タウナギ科タウナギ属タウナギ Monopterus albus )と異なる。孰れにせよ、「サメ」という意味はないのであるが、そう読まないと、話しが合わないので、敢えて「ざめ=さめ」とした。異論があれば、相手になる。]
■「ほねなしふか」
「一《いつ》に『わにふか』。
長《ながさ》、凡《およそ》、五、六尺。
[やぶちゃん注:以下は、図を挟んだ左側のオプション。]
肉、味、美にして
『ふか中《ちゆう》の上品』とす。」
[やぶちゃん注:これは、図から、
テンジクザメ(天竺鮫)目オオセ(大瀬)科オオセ属オオセ Orectolobus japonicus
である。しかも、前の「図版2」の図よりも、体表のヴァラエティに富んだ模様が描かれてあり、甚だ、グッドである!
「わにふか」「わに」は本邦の古語で、「鮫(さめ)」を指し、「ふか」は同じく「鮫」、或いは、鮫の中でも大形の種群を指す「鱶(ふか)」である。日本語サイト「SUGA MARINE MECHANIC LLC. aquatic pro」の「オオセ Orectolobus japonicus 」には(YouTubeの動画もあるゾ!)、『オオセは平らな体と幅広い頭部、そして口のまわりに多数の皮弁(ひべん)があるのが特徴的なサメです。 サメと言うと、中層を泳ぎ回っているイメージがありますが、オオセは海底にじっとしていることの多いサメです。 動かない姿は岩や海藻と見分けがつきにくく、自然の中では非常に目立ちません』。『「オオセ」という名前は「大瀬(深い海)」に由来するとも、地方名から付けられたとも言われますが、詳細はわかりません。 英名は「wobbegong(ウォビゴン)」で、オーストラリア周辺の近縁種にも同じ系統の名前が使われています。 じっとしている姿からは想像しにくいですが、素早く餌に噛みつくことができる捕食者です』。『一般には食用にはされませんが、地方によっては煮付けや干物などで利用されることもあり、美味とされています。 なお、鋭い歯を持ち、近づいたり触れたりすると咬まれる危険もあるため、観察にはそれなりの注意が必要です』とあった。何より、このキャプションにピッタンコのページであった!
取り敢えず、何時もお世話になる「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページもリンクさせておく。「味わい」に『鱗は包丁が入らないくらい硬い。骨も軟骨魚類にしては硬い』が、その堅い『鱗の下には』、『厚みのあるゼラチン質の層があ』るとある。これが、冒頭の異名「ほねなし」=「骨無し」の由縁と採れる。
なお、私は、オオセを食ったことがないのだが、このページの料理の画像と解説を見ていると、是が非でも、どこかで食べたくなること、請け合いじゃ!!!]
■「めしろさめ」
[やぶちゃん注:これは、
軟骨魚綱メジロザメ(目白鮫)目メジロザメ科メジロザメ属Carcharhinusに属する十四種の総称
であるが、特に名にし負う種である、
メジロザメ Carcharhinus plumbeus
である。詳しくは、「鱶鰭の說(その1)」の私の注を見よ。]
■「まめしろ」
「大隅、「まのくり」。
長《ながさ》、凡《およそ》、
七、八寸。」
[やぶちゃん注:これは、「東京大学総合研究博物館 標本資料報告 第132号 The University Museum, The University of Tokyo Material Reports No. 132 東京大学総合研究博物館動物部門所蔵 魚類標本リスト(3) Catalogue of fish collection deposited in the Department of Zoology, The University Museum, The University of Tokyo Vol. 3 和田英敏・小枝圭太・上島 励」著のリスト(PDF)から「マノクリ」で見つけ出した。
メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ(星鮫)属ホシザメ Mustelus manazo
である。]


