立原道造草稿詩篇 古典的な夜
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここで、底本の注記はここから視認出来る。同全集の「第六卷 雜纂」のここを元に、初期形を示した。初期形は無題である。]
【初期形】
(ためらひながら⋯⋯)
ためらひながら月が魔法使の身振りで光をひろげる、眠つた花の平和の上に、小鳥は時々眼をさます、巢のなかで飛ぶ眞似をするために。(それは夢が重い手を彼等におくからだ。)希臘の彫刻よりも美しい風が吹きすぎる。雲が地上におりて來る。
時間はとまることなく步いて、そして見つける、すべての綠色は菫色であることを、
【改稿】
古典的な夜
いつもの仕方で氣むづかしい夜が落ちた。⋯⋯
月がためらひながら魔法使ひの身振りで光をひろげる、眠つた花たちの眠りの上に。小鳥はときどき眼をさます、巢のなかで飛ぶ眞似をするために。(それは夢が重い手を彼等におくからだ。)希臘の彫刻よりも美しい風が吹きすぎる。雲が地上におりて來る。時間はとまることなく步いてそして見つける。すべての綠色は菫色であることを。
誰の夢にも句讀點はない。
[やぶちゃん注:「希臘」読み方であるが、私の立原道造の電子化で、一件、確認出来た。「もし鳥だつたら」の冒頭で、『もし鳥だつたなら、ギリシヤの柱のてつぺんで、朝日の歌をうたはう。橄欖(オリーブ)に包まれた神殿に隅まで明るい朝日、そのなかで、死ぬまで心をはりつめて。』とあった。従って、ここは「ギリシヤ」と読んでおく。]

