立原道造草稿詩篇 午後
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここで、底本の注記はここから視認出来る。なお、これ以降は、前の「(少年が⋯⋯)」の最後に附した注を、必ず、読まれたい。]
午 後
陽は淡く雲を通して、その雲には風が絕え間なく鳴つてゐた。かげは乾いた土に衰へた僕を作る。
ふと――どこかで海草のにほひがする!
立ちどまつて、その奇妙な新鮮さに、注意深く嗅がうと、試みた。再び僕は知ることが出來ない。
街道を、物憂い牛車が近づて來た。
――步きはじめねばならない。
もうたそがれは近いだらう。
[やぶちゃん注:以下、概ね、ネイティヴでない読者のために注した。
「陽」「ひ」。
「海草」「かいさう」だが、厳密には「海草」は海産種子植物の被子植物門単子葉植物綱 Monocotyledoneae の種のみ示す(代表的な種はオモダカ(沢瀉・澤瀉・面高)目アマモ(甘藻)科アマモ属アマモ Zostera marina :別名リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(龍宮の乙姫の元結の切り外し))から、「海藻」とする方がよい。
「牛車」「ぎうしや」。凡そ古語の「ぎつしや(ぎっしゃ)」と物知り顔に読んだら、風流どころか、噴飯物である。]
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