立原道造草稿詩篇 流れ
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここで、底本の注記はここで視認出来る。]
流 れ
モーターの響をこえて風は人の夢を運ぶ⋯⋯⋯谷間に咲いた百合は白いといふがこの底をなんびき魚は泳いだかしら。花は咲き花は散り、靑い光線(ひすぢ)のなか、紫陽花、りんだう、萬年草のたぐひ。とほい思ひ出のやうに。風はひとの夢を追ふ。
[やぶちゃん注:「モーター」以下から、湖水(「谷間」云々の謂いから推定)のモーター・ボートのそれであろう。但し、実際の湖水を推定することは、出来ない。冒頭注で示した堀辰雄宛書簡で、立原は冒頭部で、『この夏は、たうとう東京でぼんやり過してしまひました、佛䌫西語などをすこしやつてもたりして、田舍へも行きたいと思ひましたけれど、結局どこへも行かずしまひでございました。頭のなかで、よい景色のことばかり考へて居りました。そいて、何だかそれが、僕に一番気に入る方法だと、新字ながら⋯⋯』とあることから、私は、これは、空想上の湖水であったと考えた方がよいと考える。]

