立原道造草稿詩篇 チユーリツプは
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここで、底本の注記はここから視認出来る。そこに、『*第一、第二詩はそれぞれノート中に初稿(ほぼ同文)を持つが、第二詩が、左面第二行目より起句されえいるので、一連の組詩と見做した。』とあり、さらに、『*第一詩は⑴ノートの中の下書き、⑵本稿、⑶詩集『日曜日』跋文の順に変化する。因みに本稿では詩集に採用の印らしく、緑色鉛筆の丸印がある。「彼」を「彼女」に修正。』とあった。同全集の「第六卷 雜纂」のここを元に、初期形を示した。
当初、ノートの初稿の「彼」は自身のことかも知れないと考えたが、二行目は改稿と同じく「僕」を用いていることから、編者の誤字とする変更を受け入れることとした。
なお、詩集『日曜日』は、既にブログで2016年6月13日に「日曜日 (全) 立原道造」として電子化注してあるので、そこから、跋文相当の箇所を転写して示しておいた。]
【初期形[やぶちゃん注:ノートの順列のままで示した。]】
成 長
僕の部屋よ お前は誰より
いちばん僕を愛してゐる
けれどこの窓を入つて來られるのは北風だけだ。
◇
僕の年齡は僕をひきとめない
夜になると僕はお前のランプにさようならする
◇
僕の手は僕の形をしてゐなけれいけない
いつも
僕の部屋へ入つて來られるのは 北風だけだ
チユーリツプは咲いたが、彼女は笑つてゐない、
風俗のおかしさ、花笑ひと僕は紙に書く
【改稿】
チユーリツプは
チユーリツプは咲いたが彼女は笑つてゐない⋯⋯
風俗のおかしみ ⦅花笑ふ⦆と僕は紙に書きつける
☆
けちん坊の海と格鬪せよ
これは僕の受け取つた命令だ
☆
僕の手は僕の形をしてゐなければいけない いつも!
【詩集『日曜日』の最後に配された「跋⋯⋯」の詩形】
跋(ばつ)⋯⋯
チユウリツプは咲いたが
彼女は笑つてゐない
風俗のをかしみ
《花笑ふ》と
僕は紙に書きつける
⋯⋯畢(をはり)
[やぶちゃん注:本来、詩集『日曜日』のそれは、字配とポイント落ちがあるが、今回は、字下げのみを施しておいた。]

