立原道造草稿詩篇 峽の歌
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。「峽」はネイティヴでない読者のために言っておくと、道造は、諸作品を鑑みるに、訓で「かい」と読んでいよう。「山と山とに挟まれた所」を指す。音では「ケフ(キョウ)」、訓では、別に「はざま」(挾間)とも読めるが、音は道造の詩語としてはあり得ず、「はざま」では、印象がダルになり、リズムも良くない。]
峽の歌
光りながら消える水は
小さな渦卷きだ あれは白だ
空は靑く透いてその流れに
葉の姿を映してゐた
水を見てゐたのは誰だらう
お前だつたか 僕だつたか
消えながら光る水は
小さな淀みだ あれは靑だ
雲は白く透いてその飛沫(しぶき)に
鳥の形を映してゐた
水を見てゐたのは誰だらう
お前だつたか 僕だつたか

