立原道造草稿詩篇 卑怯の歌
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。]
卑怯の歌
雨に濡れて立つてゐる あれは人だ
あれはかなしんでゐるが出たらめだ
傘を曲げマントをとほしづぶづぶに雨
寒さが骨に滲み 足がたはみたはみ
脣を嚙んでゐるだらう だがあれは歌ふ
誰も憎まない歌を その裏切りを
風が雨を橫に倒す 頰が濡れた 顏が
流れたまゝ 雫は人に日が暮れた
あれはかなしんでゐるが だめだ
あれはあゝしてやがては朝を見るだらう
[やぶちゃん注:第四聯の最後の「雫は人に日が暮れた」は論理的な構文としては、躓く。しかし、この躓きは、私の場合、本詩篇の救いのないブルージィな雰囲気の中で、最も、直感的に瞬時に感受し得た。この一篇、道造の詩の中でも、救いのないブラックな作品と感じる。いや、だから、好きだ。何故か?……これはまさに……この私自身の半生への……突き出された「宣告」だからである⋯⋯]
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