立原道造草稿詩篇 散步
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここ、底本の注記はここから視認出来る。そこに、『初稿はノートの』昭和七(一九三二)年の『7月20~28日のページの詩群中にある、』とし、それは同全集「第二卷 詩集II」のこれである。さらに『初稿の詩句との関連に拠り、二稿と判断されるものがあ』るとして、全文引用がされてある。どうも、これは、同全集では、それを活字化されていないものであるからこそ、ここにわざと引いているのだと理解した。そこで、それを【第二稿】として示すこととした。前二稿は無題である。]
【初稿】
風景さへ僕には信じられなかつた。肋骨に指をしづかに觸れては、散步に出かける時間ををはかつた。それは、森のなかに誰でもがする一つの風習である。(だつた)。僕は衰へたかげを、作りなほさうとつとめて、このはかない營みにさへ心を喜びを見つける。そしていつか僕は日每の曆さへ信じなくなつてゐた。
【第二稿】
肋骨に指をしづかに觸れては散步の時間を知る。森のなかのひとつの習はしだ。
風車を廻す風たちの速さで日蔭のそこここを步きまはる。
人々は每日の曆をもう信じない。
【決定草稿】
散步
肋骨に指をしづかに觸れては散步の時間を知る。
風車をまはす風たちの速さで村のそこここを步きまはる。

