立原道造草稿詩篇 物尺の歌
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。「物尺」は「ものさし」と読む。一般には漢字熟語では(辞書に於いては)、「物差」「物指」が普通である。老婆心乍ら、「糎」は「センチ」。「洋燈」は「ランプ」と読んでいよう。「慌しく」は「あわただしく」。]
物尺の歌
暮れかゝる室內に測るのであつた
机は七五糎 洋燈は四〇糎 花は三糎
もう目盛は蒼い夕闇の色にかくれてゐた。
だのに慌しく 呟きながら讀むのであつた
ペン軸は二〇糎 本箱は九糎 窓は一六三糎
はてしない數字の群がりを このにせの大きさを
物尺の冷えた膚にしつかり指で抑へてゐた
(物尺は暗がりで星形の棒となるのであつた)
椅子は九一糎 僕は五糎
いつまでも いつまでも 三二糎
[やぶちゃん注:この詩、妙に……孤独に……好きだ…………。]

