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2026/02/04

立原道造草稿詩篇 夜

[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。そこに、『ノートの』昭和七(一九三二)年の『7月28日の頁の「夜」(異文)を原型に持つ。』とあり、それは同全集「第二卷 詩集II」のこれである。それを【初稿】として示すこととした。]

 

【初稿】

 

  夜

 

 睡眠者は彼のまはりにZを撒き散らす。

(昔の頃の活動の漫畫。)そして、彼の夢のなかで、坂が傾いて、陽があたつてゐる。

 

 夜は、まるく刳り拔かれ、そこに、蛾や、蜻蛉が集まつてゐる。そのあたりに、別の夢がひろい海と貝殼をひろげてゐる。

 

 がやがやとはなし聲が聞えてゐる。

 

 

【決定草稿】

 

  夜

 

眠りと夢がしづかに嚙み合つてゐる。齒車のやうに。

銅の坂が傾いて、陽があたつてゐる。

その傍に、牢屋がひろげられ、貝殼たちが海の深みへ滑つて行く。

がやがやと人の聲がする、薔薇の茂みのかげからのやうに。

 

 

[やぶちゃん注:初稿について。

「睡眠者は彼のまはりにZを撒き散らす。」は「(昔の頃の活動の漫畫。)」で判る通り、舶来のアニメーションの中で、英語の鼾(いびき)を指す擬音表現“ Z-Z-Z! Z-Z-Z!…… ”を指している。

「蜻蛉」は、若い読者や、ネイティヴでない読者の方のために附しておくと、この場合の読みは、「とんぼ」ではなく、「かげらふ(かげろう)」と読み、昆虫綱有翅亜綱旧翅下綱 Ephemeropteroidea上目カゲロウ(蜉蝣)目Ephemeroptera に属する多くの種群を指す。生物学的に、より細かい記載は、私の「生物學講話 丘淺次郞 第十九章 個體の死(4) 三 壽 命」の私の注を見られたい。]

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