立原道造草稿詩篇 或る朝
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。]
或る朝
目がさめると、どうも具合がへんなんで、右の眼をとぢると、そこにある景色は、僕の眠つた部屋とすこしちがつてゐる。第一、窓の外の空はきれいすぎるし、それに天井には並の反射が搖れてゐる。だが、左の眼をとぢると、やつぱりいつもの着物だとか壁にぶら下つた僕の描いた鷄と向日葵の繪だとかよく見えるのである。よくよくへんなので、もう一ぺん右の眼をとぢたら、今度は、僕の身體が自然に天井の方へ浮き上がつてしまつた。それで、僕は、まだ眠りが半部のこつてゐるんぢやないないかしらと思ひながら、仕方なしに起きあがつたのである。

