立原道造草稿詩篇 黃昏の歌
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。表題は「たそがれのうた」と読みたい。]
黃昏の歌
日が暮れかゝると かうであつた
窓で白い顏の人が 星の形した棒で
くらがりを測つてゐた 低い聲で
はてしない數字の群を 讀んでゐた
町は靄のなか あかりはともり
まじめくさつ顏の 水平は自轉車で
子供用のの靑塗りの 低い自轉車で
とほくの壁から 姿を消し
母たちが戶口に立つと 呼び交しながら
子供の群は どこかに逃れ
旗の手を町の夕燒を しづかに休め
日が暮れかゝると かうだつた
[やぶちゃん注:「旗の手」は、この詩の全シチュエーションが、軽井沢をロケーションとしているものではないかと私には直に思われ、さすればこそ、これは、今の「旧軽井沢銀座通り」の商店の幟(のぼり)であろうと、全く、躓かずに、想起出来た。異論がある方は、御意見を乞うものである。]

