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2026/03/27

立原道造草稿詩篇 夏の旅

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。それに拠れば、『「工藝史槪說ノート」の書入れ』で、『副題により「民謠」(昭和1010月発表)とつながり、同時に拾遺詩「夏の旅」(昭和1011月発表)のヴァリェーションと考え、制作は同年秋と想定する。』とある。既に、「民謠」はここで、「夏の旅」はここで、電子化注しているが、孰れも、本底本の当該詩篇を視認したところ(「民謠」はここ、「夏の旅」はここ)、どちらも問題があったので、今回は、二つとも、全面的に仕切り直した。但し、注の中のリンク先のものは、一部、検証し切れていないので、注意されたい。

 なお、添え題中の「エリザ」については、「民謠」の私の注で、『「エリザ」』『中村氏の注によれば、これは「SONATINE No.1」冒頭の「はじめてのものに」の「エリーザベト」で中村氏が注している『ドイツの作家』『シュトルム』『の小説「みずうみ」の女主人公の名、めぐりあった少女をなぞらえたもの』の『エリザベートか?』と注する。』としてある。]

 

  夏の旅

    ――エリザの記念(かたみ)に――

 

   1

 

砂ほこりの道だつた 暑い日であつた

僕はときどき 道の傍の石にやすまなくてはならなかつた

とほくまで景色は澄んでゐる

 

僕が おまへといつしよにのこして來た

あの活火山の煙が見えてゐた とほかつた

しづかな雲が捲いて來たがすぐに消えてしまつた

あの山の爆發するのが不意によく見えた

 

   2

 

湖には舟が浮いてゐる

誰をのせて?

さざなみだけ それつきり

おまへひとりで

何しに來たか

靑い空が 八ケ岳が

僕を叱つてゐるやうだ

 

底がをはつたらおまへに告げよう

湖の水は黑くつめたかつた

夜になつて 宿のあかり

いくつか點をつらねて ゆらいでゐた

 

   3

 

その小さい湖のほとりでも

僕が考へてゐたのはおまへのことばかりだつた

水面(みづ)に搖れてゐた

おまへの方に向つてうたつてゐた

 

 

[やぶちゃん注:言うまでもないと思うが、最終の第三聯の「水面」の二字へのルビが「みづ」なのである。私のミス・タイプではない。]

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