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2026/03/28

立原道造草稿詩篇 (私の 貧しさは⋯⋯)

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。そこに、『草稿無題。堀辰雄?の「昭和十三年一月」のメモがある。』とあった。

 さても、実は、これ、二〇一五年九月に、ここで、電子化注している。しかし、それは、旧角川書店版全集の、ここに基づいたものであり、本底本の物が正しい。ただ、そういう書誌学的な不全が、長く後の詩集・選集に影響を及ぼしている例として、敢えて残すこととした(標題で判るようにしておき、この投稿が正規版であるとするリンクも附した)。カットしたくないのは、私が、最後に注で、この詩篇への感懐も述べているからでもある。

 

  (私の貧しさは⋯⋯)

 

私の 貧しさは 暗い淚をたれ

ひつそりと 建物の壁に沿つて 步く

風が 私の髮を かきみだしてゐる

怒つたやうに⋯⋯

 

不意に 明るい場所へ 出るので

影は 濃く 風が にほひはじめる

日向の色に 私の心は耐へかねない

しづかに 聲を立て むせび泣く

 

そして どこからか 老いた

母の うたふ聲が 私を立ちどまらせる

眠らせようとでも するやうに

 

明るい晝なのに 何かしら眠りが

私のうちを ゆきすぎる⋯⋯ああ

この疲れに 私の步みは すでに馴れはじめた

 

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