立原道造草稿詩篇 枯木
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。]
枯木
衰へたかげにからんで
その濃い紫と 空色は
はじめての死に身をまかせ
暮れて行く風に身をまかせ
耳にうたつてゐたのだ
誰にもかなしいと聞える歌を
それはずるい枯木であつた
はじめは人がまちがへて枯木をかなしく思つたけれど
ああ それはずるいずるい噓つきだつた
[やぶちゃん注:この枯れ木の種が全く判らない。「濃い紫と」「空色」というのは、この枯れ木の表面上の色と読めるが、表面に蔓延った地衣類の色であろうとは思うものの、この表現だけでは、それらの候補種を挙げることも、植物には冥い私には、出来ない。識者の御教授を乞うものである。]

