立原道造草稿詩篇 (かなしいまでに……)
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。]
(かなしいまでに……)
かなしいまでにとほくを見て
眼よ おまへは泪をひたかくしてゐた
明るい雲の流れる街に
ボロの軒下を拾つて步き
おまへはひとをさがしあぐんだ
つれなかつたひとを
耳よ おまへのなかに老いたかなしみが
潮騒をうたひ とほい靄の夜をささやいた
夕暮れて 夕暮れは汚れた城のやう
荒れた草生にひとを待つてゐた
おまへは 來ないひとを
足音を
ながいこと さうして私はさまよつた
驢馬の步みよりまだ愚かしく
私は さうして ほほゑむだ
耳よ 眼よ
私は さうして ほほゑむだ
かつて愛したものの形は消えるまで
[やぶちゃん注:やはり漢字の読みが気になる。「眼」は全体を読み終わると、「まなこ」では、音律が上手くなく、結果的に浮いてしまい、おかしい。これは「め」であろう。
「草生」は「くさふ」と読む。草原に同じい。]
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