立原道造草稿詩篇 小さな墓石の上に
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。それに拠れば、『主題により「小さな墓石の上に」(昭和10年1月発表)の異文と想定する。』とある。決定稿は私の「小さな墓の上に 立原道造」であるが、今回、検証したところ、底本としたものが、致命的な操作をしていたことが発覚したので、修正した。――なお、決定稿と比べると――天と地の差がある。無論、決定稿が――断然――限りなく――哀しく素敵だ――]
小さな墓石の上に
いろいろなことが書きたかつた それをたつた一人の人に讀ませたかつた すなほな物語に就て
*
掌から粉雪が降つた
あれきり
木枯しともう歸らなかつた
僕の曆と悲しみをそつとお前に彫りつけよう 白い骨に
*
しづかに移る道のかげが
あの日 僕を步ませた
木立に透いて 白い雲が浮いてゐた
もう明るい歌はなかつたが
その小さな墓石の上に はてない空が
きつとお前の僕にあてたことづけだつた
*
たのしかつた日曜日をさがしに行かう
見つかつたら もう默つて生きてゐよう
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