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2026/03/13

立原道造草稿詩篇 啞蟬の歌

[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。それに附言の三好達治について、『月刊詩誌「四季」代表者の一人。立原が昭和9年10月「四季」創刊に参劃したのは、堀辰雄と、「未成年」を読んで感銘した三好の水推輓によるものである(三好達治「立原道造君」昭和14・5『文藝』)。』とある。標題中の「啞蟬」は「おしぜみ」と読み、「雌のセミ」を指す。]

 

  啞蟬の歌 

    ――三好達治氏に

 

 僕は もう歌はなくなつてゐた

 物のよろこびとかなしみを見わけることがなくなつてから 

明るい空ばかりを美しい色で描いて 

ああして 幾日が經つたらう

 

僕は もう歌はなくなつてゐた 

杉の梢も 楡の木も 學校歸りの子供らも 消えてばかりゐる雲も 

たつた一つのいのちのためには

 どれだけのかげが投げられたのだらう

 

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