立原道造草稿詩篇 徑の曲りで
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。そこに、『裏書き一枚』とし、『下方に「Ⅴ また落葉林で」の無題初稿』(私の「また落葉林で 立原道造」を見よ。但し、既に述べた通り、表記は問題がある)『を持つことから『優しき歌Ⅱ』第一回清書の直後に制作と想定する。』とあった。なお、表題の「徑」であるが、「みち」と「こみち」の訓があるが、道造は「こみち」の場合は、「小徑」と表記するので(例えば、ここ)、「みち」と読んでおく。ただ、小さな最後の改行「⋯⋯」はママ。私のミス・タイプではない。]
徑の曲りで
ほてつた 私の耳に
もう秋! おだやかな 陽氣な 陽ざしが
林のなかに ささやいてゐる
蜂蜜のやうに 澄んで⋯⋯
私らは 步いて行く⋯⋯風が
鳴つてゐる 木の葉が
光つてゐる――見おぼえののあるやうに
とほくの方で あちらの方で
花の名 鳥の名は 私らの
心のなかで またくりかへしては告げられる
もう見られないものまでも
昨日 ふたたびあたらしく はじまつた
しかし それが こんなにたよりないのだらうか
⋯⋯

