[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。]
(かつてひとりが⋯⋯)
かつてひとりがいはなかつたか
お前はもうゆるされてゐないと。
それは冬のうすい日のさす午後だつた
いつまでもそのやうにひとりは
水に映つたかげをたのしんでゐた
それから顏をあげていはなかつたか
お前に歌ふすべはなからうと。
それは突然に來た不思議であつたか
もう知る者はないだらうか――。
私は池のほとりに歸つて來る
それから尋ねる 答を貰ふために
私は空を眺めたる水を眺めたりする
それから呟く 何事もなかつたと
自分でもうそだと知りながら それだけのことを。
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