立原道造草稿詩篇 優しき歌 (添え題:「光のなかで」)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。そこには、『同奥書きに「優しき歌――樹木の影に」初稿および無題下書き「太陽は空の中心にかかる」を持つ。『優しき歌Ⅱ』を集中制作していた昭和13年夏の作品と想定する。』とある。「優しき歌」の「樹木の影に」の決定稿は、以前に電子化したものがここにあるが、底本が不全なものである(前に言った通り、膨大な作品の一部であって、全部を書き換えることは、今は出来ない。悪しからず)。なお、「太陽は空の中心にかかる」の下書きは、底本全集の「第六卷 雜纂」のここで視認出来る(この「下書き」類は、以前に言ったように電子化するつもりである)。
この草稿は、以前に、ここで電子化したが、それは、私の「優しき歌」群の参考のために杉浦氏の編になる岩波文庫「立原道造詩集」から恣意的に電子化したものであるので、今のところは、取り敢えず、ダブったそのままに残しておく。]
優しき歌
光のなかで
風は あちらの梢で
僕を招いてゐるが 僕は
ここを離れずにゐる
裸の眼にうつる靑い空と白い雲と⋯⋯
僕は いまからは 明るい
太陽と光とばかりを
とらへようとおもふ
影のなかに ながいこと ひとりでゐたが
おまへを おもふと 僕は
たしかに つよく 力にみちて來る
ここのせまい身のまはりが
こんなにひろく豐かになる
しかし それは飾られたのではない
僕らの心が 耐へて さうなるのだ

