立原道造草稿詩篇 古調
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。]
古調
1
聞きほうけて ひとりありき
そは古びたるわが身の歌なれば
そは常になくやさしき歌なれば
2
明るさはわが傍に羽搏き
ひとときもやむことなく
ささやきぬ やすらかに
わがいのちかくあらばや
いつの日も かろやかに
3
ふるさとはなくしすれどふと見出たる
この心かなし
昔かく人のうたひきといふ蓬・柑子・鷗はしらねどこの心たのし
4
とぎれに思ひつる
そは何(なに)なりしか
かかるひととき
かすめゆく面影 しなびたる黃水仙
すべては消えるままに消えつつ
5
ふたたび 唄飛ばずなりぬ
いつの日 歸るさだめならん
耳すまし きいてあれども

