立原道造草稿詩篇 (大きな町の上に⋯⋯)
[やぶちゃん注:底本は初回を見られたい。本篇はここから、底本の注記はここで視認出来る。そこに、第十一行目の初稿が記されてあるので、それで復元した。]
【初稿】
(大きな町の上に⋯⋯)
大きな町の上に空があり
かかはりもなく雲と雲はしづかに
風に送られ日暮れの色をうべてゐた
僕は見てゐた
(ああ 僕は人を呼んでゐる)
鳶色に紫まぜた靄が包んで行くと
あかりがひとつひとつともり きらめき
もう町の騷ぎを聞かなかつた
(ひとりぐらしを平和がささへる)
どこへ走つて行つたか
うすい色の空の上に白かつた
ああ さがしたが 町中一面に
じれつたくなり月が光を增して行つた
【決定草稿】
(大きな町の上に⋯⋯)
大きな町の上に空があり
かかはりもなく雲と雲はしづかに
風に送られ日暮れの色をうべてゐた
僕は見てゐた
(ああ 僕は人を呼んでゐる)
鳶色に紫まぜた靄が包んで行くと
あかりがひとつひとつともり きらめき
もう町の騷ぎを聞かなかつた
(ひとりぐらしを平和がささへる)
どこへ走つて行つたか
うすい色の月が光を增して行つた

