立原道造草稿詩篇 風のうたつた歌 (添え題?「風はあらしを夢みはじめた」)
立原道造草稿詩篇 風のうたつた歌 (添え題?「風はあらしを夢みはじめた」)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。それに拠れば、『草稿消失・角川書店版第五巻』とある。旧版のそれは、ここである。添え題らしきものがあるが、位置は二字下げで、「その一」の方に近くあり、ポイントも本文と同じである。添え題としては、極めて特異的である。さらに、次の「子守唄」の後に、『以上二篇は角川書店第五巻の配列に従った。必ずしも盛岡よりの帰京後のものとするわけではないが、最晩年に制作と見てここに置いた。』とある。
これは、過去に、昭和六一(一九八六)年改版三十版角川文庫刊中村真一郎編「立原道造詩集」を底本として「風のうたつた歌 風はあらしを夢みはじめた 立原道造」として電子化注してあるが、中村氏が読みを添えていること、また、その後に、同名表題の異篇「風のうたつた歌 立原道造」と、それと全く★同名異篇の「風のうたつた歌 立原道造」を続けて電子化注した関係上、凡て、残しておくこととした。]
風のうたつた歌
風はあらしを夢みはじめた
その一
ああ眼 この眼は 外をさまよつた
ものの上に もののまはりに
拾ひあげるのは歌だつた ほほゑむだ
この眼は內を觀なかつた
すなほなれと祈り
のどかなれと祈り
低く 低くさまよつた
ああ眼 立ち上れ
立ち上れ
お前を造つた者の手にまで
燃えあがり流れひそめた空にまで
その二
私はひとりでしづかであつた
草原を信じてゐた
私は花を愛しつづけた
しあはせを知つてゐた
ちひさな ちひさな
私は みんななくしたと
砕けたいのだ いらだちたいのだ
苦しみ 逞しく 昏く
咽喉は吠えよ
咽喉は喚け
私はひとりで信じてゐた
平野を愛した ちひさな ちひさな
その三
呼んでゐるのは 嵐だらうか爭ひだらうか
鷲だらうか 意志だらうか
よわよわと呼んでゐる 私の口は思ひ迷ふ
私は渦卷き とまつてゐる うなだれる
どうにかしたい これが己だと信じたい
その四
手はしなしなと ためらふな
手は翼となれ
雄叫びとなりて 空を打たう
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