立原道造草稿詩篇 朝に / 絶筆2
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。それに拠れば、前篇の「(灼ける熱情となつて⋯⋯)」で示した通り、『以上二篇は赤鉛筆書きで、「朝」が下方にある。』とある。
これは、過去に杉浦氏のもので恣意的に正字化して電子化注してあったが、これは、道造の絶筆の一つ前であるから、旧版は削除し、正規版として、私の注を新たにして、電子化した。]
朝に
きのふのやうに 僕たちは
たそがれの水路のほとりに
暮れやらない 空のあかりを
長い嘆かひに 時をうつしてはならない
陽の見えない空のあたりを
赤く染めながら 今夜が明けようとしてゐる
風は つめたく 身體を打つが 僕たちは
あたらしいものの訪れを感じてゐる
それが何か それがどこからか――
けふ 私たちは 岬に立つて
眼をあちらの方へ 投げ與へよう
ひろいひろい 水平線のあちらへ
》昨日は をはつた!《
すべては 不確かに 僕たちを待つ
[やぶちゃん注:「嘆かひ」前の「立原道造草稿詩篇 (灼ける熱情となつて⋯⋯)」の私の注を参照されたい。
「》昨日は をはつた!《」この、独特の反転した山形二重鍵括弧による挟み法は、立原道造の詩篇類の中でも、特異点である。
*
なお、この執筆に先行する詩群「優しき歌」の中に、同名異篇の「Ⅵ 朝に」がある。私の「朝に 立原道造 / また晝に 立原道造」を見られたい。通性が感じられるが、本篇には、あたかも自らの死を、予感しているような悲壮のニュアンスを、私は感じとる。人それぞれであろうが……。]
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