立原道造草稿詩篇 (この闇のなかで⋯⋯)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、本パートの初回のこちらを見られたい。本篇はここから、底本の注記はここから視認出来る。そこには、『草稿無題。』とある。
この草稿は、以前に電子化したが、私の注もしていないので、削除し、仕切り直しとした。]
(この闇のなかで⋯⋯)
この闇のなかで 私に
うたへ と呼びかけるもの
この闇のなかで だれが
うたへ と呼びかけるのか
時はしづかだ 私らの
ちひさいささやきに耐へぬほど
時はみちてゐる 私らの
ひとつの聲で 溢れ出るほど
とほい涯のやうに闇が
私らを拒んでゐる つめたく
身體は 彫像のやうだ
しかし すでに この闇の底に
信じられない光が 信じられる
私らの聲を それは 待つてゐる!
[やぶちゃん注:「拒んで」老婆心乍ら、「こばんで」と読む。
「身體」今更に言うこともないが、道造は詩の中では、まず、「からだ」と読んでいる。]

