河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注 中卷(七)乾鰕の說(その4)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの左ページから。冒頭、和名・別名を列挙する部分で、読者に判り難い箇所があるので、特異的に≪ ≫を用いて助詞を添え、さらに、どこで種が変わるかも、極めて判別が困難であるため、改行した。但し、河原田氏の書き方には不審があり、同種の異名としか思えないものが、別種であるような形で書かれている箇所が複数ある。ともかく、異名であることを意味するものが無い場合、概ね、改行した。
なお、前回の「(その3)」で述べた通り、海産エビが非常に長くなった関係上、特異的に、ここでは、淡水エビ(汽水も含む)パート部分のみを独立させて、考証することとなる。従って、本文は、その部分を再度、掲げておいた。★なお、河原田氏は次の段落以下の中で、以下の和名・異名を以って解説をしているが、私は、あくまで、この名前のみを以って、独自に種同定を行っている。或いは、そちらの河原田氏の説明で、私の種同定とは異なった種を指していることが判るかも知れない。その時は、追加注を追加する。 ]
淡水に產するものは、
『つえつきゑび』【一名、】『てながゑび』【又、】『はたさゑび』【又≪の≫名、】『かれき』【又、】『たなかゑび』
『かたヽゑび』【一名、】『かはゑび』【又、】『てんごうゑび』【又、】『てんほうゑび』
『しらさゑび』【一名、】『しらさい』
『てんす』
『たゑび』
『つげほり』
『つゆゑび』
『はだかゑび』
『ぬかゑび』【一名、】『あみ』[やぶちゃん注:ここは絶対に別名としか思えないので、特異的に改行しない。]『あみざこ』【又、】『あめゑび』[やぶちゃん注:同前で改行しない。]『あなヽみ』【又、】『あめこり』【一名、】『つみあみ』
等《とう》なり。
[やぶちゃん注:私は前回で、河原田氏が、実は、「本草綱目啓蒙」を元に和名(異名)を羅列したと推定し、海産エビでは、それを証明出来たと考えている。而して、淡水エビでも、それが、同様に出来たと確信している。されば、まず、「本草綱目啓蒙」の淡水エビ・パートを、総て、引用して、私の証明証拠とする。当該パートは前回の引用の前の部分に当たる。国立国会図書館デジタルコレクションの前回の画像では、ここからである。同様に、「鰕」を除き、全体が二字下げであるが、引き上げた。割注ポイント落ちは【 】で示した。記号・句読点を推定で附した。一部に推定で《 》で読みを、歴史仮名遣で、カタカナ、或いは、ひらがなで添えた。異体字は調べて表記出来ないものは、通常の字体で示した。一部、助詞が足りない箇所には、≪ ≫で補った。冒頭部分は、エビの総説であるが、この際、電子化した。前回の引用をこれに繋げると、同書の「鰕」部の全文となる。また、★今回は、河原田氏が示した『淡水に產するもの』と一致、或いは、酷似する名(判読上、明らかに間違え易いものに限った)に下線・太字を打った。結果は――まさしく!――「細工は流々(りゅうりゅう)仕上げを御覧(ごろう)じろ」――だッツ!
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鰕
ヱビ
〔一名〕何【「鄭樵《ていせう》爾雅註」。】 長鬚公【「事物異名」。】 虚頭公 曲身小子【共《ともに》同上。】 魵【「正字通」。】 長髯公【「類書纂要」。】
鰕ハ、『カハヱビ』ノ總名ナリ。大抵、ミナ、長キ鬚《ひげ》、尖《とが》レル鼻ニ乄《して》、背ニ、斷節《だんせつ》アリ[やぶちゃん注:(見た目は)切れた(ような)関節がある。]。尾ニ、硬キ甲、アリ。足、多ク乄、好《このみ》テ、躍《をど》ル。其《その》腸《はらわた》、腦ニ屬シ、ソノ子、腹外《はらのそと》ニ、アリ。生《しやう》なる者ハ、淡黑、微黃、熟スレバ、深紅色ニ乄、榴(ザクロ)ノ花ノゴトシ。淡・鹹《たん・かん》ノ二産アリ[やぶちゃん注:淡い味のものと、塩辛いものとの二種がある。]。 『ツエツキヱビ』【京・若州。】ハ、一名、『テナガヱビ』【「本朝食鑑」。】、『ハタサヱビ』【豊後。】、『カレキ』【勢州山田[やぶちゃん注:現在の三重県伊勢市宇治山田附近(グーグル・マップ・データ)]。】。 『タナカセヱビ』【同上、津。】、上州淀川ノ名産ナリ。江戸ニモ、アリ。長《ながさ》、三寸許《ばかり》。首、大ナリ。前ノ兩足、身ヨリ、長シ。黑・白二種、アリ。黑キ者ハ、子、アリ。「八閩通志《はちびんつうし》」ニ、『草蝦、頭、大、身、促[やぶちゃん注:迫っていること。]、前≪の≫兩足、大而《だいにして》、長《ながし》。生二池澤中一。』ト云《いふ》、是《これ》ナリ。一種、江州堅田《かたた》ヨリ出《いづ》ル者ハ、長サ、一寸許。一手《いちしゆ》、甚《はなはだ》、長大ニ乄、一手ハ、小ナリ。『堅田《かたた》ヱビ』ト呼《よぶ》。一名『カハヱビ』【江州。】、 『テンゴウヱビ』【備前。】、 『テンボヱビ』、 『テンボウヱビ』、 『カタヱビ』【加州。】。是《これ》、「邵武州府志《せうぶしうふし》」[やぶちゃん注:この書名の頭は、元末から民国初年にかけて、現在の福建省南平市西部と三明市北部に跨る地域に設置された「邵武府」(しょうぶふ)を指す。当該ウィキの地図を見よ。]ノ『大脚蝦』ナリ。 一種、尋常ノ川ヱビノ形ニシテ、色白キ者ヲ『シラサヱビ』【備州】〉ト云《いふ》。一名『シラサイ』【豫州。】、是、『白蝦』ナリ。「八閩通志」ニ、『白蝦生二江浦中一。』ト云フ。 常ノ川エビハ、淡青・黒色ナリ。豫州ニテ『テンス』ト云、是、『青蝦』ナリ。琵琶湖ノ大エビハ大《おほい》サ、二寸ニ過ギズ。皮・鬚、硬ク、下品ナリ。春・夏・秋、トル、ト云フ。 又、田中、及ビ、池沢ニ生スル者ハ『タヱビ』ト云、是、『泥蝦』ナリ。土州ニテ、長サ三寸許、流水泥中ニ生ズルヲ『ツチホリ』ト云、コレモ亦、『泥蝦』ナリ。「邵武府志」ニ、『蝦小者、俗、呼二泥蝦一、生二田塘池沼中一。炒二熟之一、色白者、殻軟、色紅者、殻硬。又、可ㇾ食。』ト云フ。 『梅蝦』ハ『ツユヱビ』。「八閩通志」ニ、『梅蝦、梅雨時、出二洲渚間一。』ト云フ、四、五月、田畔流水ニ、小蝦、最、多シ。是、『梅蝦』ナリ。又、秋、水芦蒲中ニモ亦、群ヲナス。是、『芦蝦』【「八閩通志」。】ナリ。凡、蝦、煮熟、曝乾、則、殻尾鬚足、脱去《だつきよ》ス。コレヲ、『ハダカヱビ』ト云《いひ》、是、『蝦米《かべい》』ナリ。廣東ノ『蝦米』、清商《しんしやう》、將來スルモノ、アリ。長《ながさ》七、八分。時珍「食物本艸」ニ、『江陰、有二銀鉤蝦一、色白、如ㇾ銀、又、有二鷹爪蝦一、大、如二鷹爪一。皆、味之鮮媄[やぶちゃん注:新鮮さと見目良さ。]、人所二珍貴一者也。』と云。「珠璣藪《しゆきさう》」[やぶちゃん注:明代に成立した類書。]ニ、『鷹爪ハ大蝦米。』ト云フ。「泉州府志」ニ、『銀鉤蝦米、出二茜徑《せけい》一[やぶちゃん注:「茜徑」現在の江蘇省蘇州市太倉市(たいそうし)七浦塘(しちほとう)附近にある地区名「茜涇社区」(とうせんけい)と思われる(グーグル・マップ・データ)。日文の「BaiduWiki」の「Fuqiao Town 江蘇省太倉市に位置する町」に『民国元年(1912年)には、太倉県の浮陸郷、茜涇郷などに分属していた』とある。]。擇二鮮鰕之小而白者一、乗二天晴一、一日、暴乾、挼二去殼一、内肉堅白、如ㇾ鉤。故、名ㇾ之。亦、有二黃鰕製者一、則名二金鉤一。此亦、吾鄕一珍品也。』ト云フ。 『米蝦』・『糠鰕』ハ、蝦ノ最モ小ナルモノヲ云。琵琶湖ノ『ヌカヱビ』ハ、秋、トル。至《いたつ》テ、細小、二、三分ニ過ギズ。味、美ナリ。大ヱビノ子ニ非《あらず》、別ニ、一種ナリ。備前ノ『アミ』ハ、一名、『アミザコ』、『アメヱビ』【雲州。】。「大和本草」ニ、『一寸バカリノ小ヱビナリ。此マヽニテ、大ニナラズ。備前・筑後ノ泥海ニ多シ。海邊ノ潮ノ入《いる》溝河《みぞかは》ニ、アリ。味、ヨケレ𪜈《ども》、有二小毒一。『ナシモノ』トシ、又、乾乄《ほして》、遠方ニ送ル。』ト云[やぶちゃん注:以上は、私の「大和本草卷之十四 水蟲 蟲之上 苗蝦」の本文及び私の注を見られたい。]。「本草食鑑」ニ、『有二種、其色、淺紫帶ㇾ黑者、江東、多、采盬煮、及、薑醋、進ㇾ之。極、爲二下品一。其色、潔白、首尾兩端、純紅者、海西、多采。備三州・肥二州、最多。作ㇾ醬、作ㇾ醋、其味、更好。』ト云フ。 「廣東新語」ニ、『銀蝦、狀、如二繡鍼[やぶちゃん注:針を用いた刺繡。]一。銀蝦、稍、大者、出二新安銅皷角海一名二銅皷蝦一。以盬藏之味亦美。其蝦醬、則、以二香山所ㇾ造者一爲ㇾ美曰二香山蝦一。其出二新寧大襟海上下二川一者、又、香而《かんばしくして》、細《ほそき》頭尾、與ㇾ鬚、皆、紅白。白身黑眼。』ト云フ。 『アミ』ハ「閩書」ノ『苗蝦』、「八閩通志」ノ『塗苗』、及、『醬蝦』ナリ。 『アミジホカラ』ハ、「廣東新語」ノ『蝦醬』ナリ。備前ニ、一種『アミ』ヨリ至《いたつ》テ小《ちさ》く、三分≪の≫一ナル者、アリ。 『アナヽミ』ト云《いひ》、又、『アナアミ』ト云《いひ》、一名、『アメゴリ』【加州。】、 『ツチアミ』【長州。】、穴居《けつきよ》乄、色、白、黑。味、美ナレ𪜈、毒、アリ。瘡ヲ、發ス。甚《はなはだ》、臭《くさ》シ。
*
さても。
河原田氏が示した淡水エビの呼称と「本草綱目啓蒙」の示した和名異名の強い類似を持った相同相似性は100%、その順番は異同がない完全一致
である。酷似しているものは、4種で、以下に、順に、河原田氏のものを前に、蘭山のそれを後に平仮名に直し、一致部分に下線を附し、一部に【 】で私の注を添えると、
①「たなかゑび」が「たなかせゑび」
②「てんほうゑび」が「てんぼうゑび」【濁点の有無のみ。】
③「つけほり」が「つちほり」【手書きの場合、「チ」は「ケ」に誤り易い。】
④「あめこり」が「あめごり」【濁音に有無のみ。】
である。以上から、
★最早、前の海産エビを含め、河原田氏が「本草綱目啓蒙」を元にしてこのリストを作ったことが火を見るよりも明らかであると言い切れるのである。
因みに、「テナガエビで『たなかゑび』もおかしいけれども、『タナカセヱビ』というのも、おかしくないか?」と言う御仁のために言っておこう。『水辺づくりの会 鈴鹿川のうお座』が二〇〇六年三月に発行した調査報告書『鈴鹿川における魚の昔の呼び名 鈴鹿川流域における魚類等の地方名に関する調査報告書』の、ここ(PDF)の『(11)-4 テナガエビ類(甲殻類エビ目テナガエビ科)』の『 ③ 採録した呼び名 』に『・ 体の特徴 アシナガエビ,テナガ,テナ ガエビ,ハソミ』、『・その他 エビガニ,クルマエビ,サケエビ,シャクエビ,ダナカエビ,タナカシエビ,タナカセエビ』(☜!)『,ダラカエビ,ダンダカ,ダンダカエビ ・ スジエビ等との混称 エビ,カワエビ』とあって、「呼び名の分布」図にも載ってるぜ!
「『つえつきゑび』【一名、】『てながゑび』【又、】『はたさゑび』【又≪の≫名、】『かれき』【又、】『たなかゑび』」節足動物門軟甲(エビ)綱真軟甲亜綱ホンエビ(本蝦)上目十脚(エビ)目抱卵(エビ)亜目コエビ(小蝦)下目テナガエビ(手長蝦)科テナガエビ亜科テナガエビ属Macrobrachium の種群、その内、学名でテナガエビは、Macrobrachium nipponense に与えられているが、本邦には同属種十五種が棲息する。私の『毛利梅園「梅園介譜」 水蟲類 蝦(テナガエビ) / テナガエビ』を見られたい。優れた図があり、かなり、しっかり注を附してある。当該ウィキを引く(注記号はカットした。太字は私が附した)。『テナガエビ属 Macrobrachium に分類されるエビの総称。熱帯・温帯の淡水域や汽水域に生息する大型のエビで、和名通り』、『第2歩脚が長く発達する分類群である』。『熱帯から温帯に広く分布し、熱帯にいる種類が多い。たとえば』、『日本の九州以北では通常テナガエビ、ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビの3種しか見られない一方、南西諸島では前述の3種を含めた15種が分布する』。『体長は3cmほどのものから』、『20cmほどのものまで』、『種類によって差がある。成体は全身が緑褐色から灰褐色である。若い個体は半透明の体に黒い』縞『模様があり、スジエビ類』(テナガエビ亜科スジエビ属 Palaemon の種群)『に似る。スジエビは目の後ろにある肝上棘(かんじょうきょく)』(個人サイト「淡水エビの飼育と観察」『蝦三昧』内の「テナガエビ(河口域群) 肝上棘を探してみる」が良い。確認は初心者には難しいようだ)『が無く、そこで若いテナガエビと区別できる』。『一番の特徴は、和名通り長く発達した鋏脚である。これは第1歩脚が大きいザリガニやカニなどと違い、第2歩脚が大きくなったもので、よく見ると大きな鋏脚の内側にもう1対の小さな第1鋏脚がある。成体のオスの鋏脚は種類によっては体長よりも長い一方、メスや若い個体は細く短い。この脚は餌をつかんだり、他の個体を排除したりするのに用いる。水底を歩く時には大小2対の鋏脚を前に突き出し、後ろの3対の歩脚で移動する。』『温暖な地方の淡水や下流・汽水域の河川、湖沼に生息する。高地の水の澄んだ湖沼には生息せず、移植しても定着できない。夜行性で、昼間は石の下や護岸の穴やテトラポッドの下、水草の茂みに隠れている。曇って陽が照っていない時であれば』、『昼でも活動し、姿を確認することができる。縄張り意識が強く、他の個体と遭遇すると戦って排除する』。『食性は』、『ほぼ肉食性で、水生動物や魚の死骸、イトミミズなどの有機物を食べる。藻類などを食べることもあるが、飼育下で動物性のえさが少ないと共食いもする』。『繁殖期は5月から9月までで、夏に多く産卵する。小卵多産で、メスは直径1mm足らずの卵を1000 - 2000個ほども産卵し、腹肢に抱えて孵化するまで保護する。テナガエビ類は』、殆んどが『両側回遊型で、幼生は海、少なくとも汽水域まで降河しないと成長できない。孵化したゾエア幼生は川の流れに乗って海へ下り、植物プランクトンやデトリタスを食べて成長し、1ヶ月ほどで体長5mmほどの稚エビになる。稚エビは川底を歩いてさかのぼり、以降は淡水域で過ごす』。『寿命は1年から3年ほどで、環境による個体差はかなりある。20cm級のテナガエビは2 - 3年生きているものである。また、オスの方が長生きする』。以下、「別名」の項。『カワエビ(各地)、ダンマ、ダクマ、ダグマ(九州地方)タナガー(沖縄方言)など』とする。
河原田氏の異名「つえつきゑび」は「杖突き蝦」で、長い第二歩脚を形容したものであろう。「はたさゑび」は現行では見出せないが、最初に私が思ったのは、合戦の際の「旗指し」である。やはり第二歩脚を掲げている様が、あたかも、そのように見えるからである。他に語源をご存知の方はお教え下さい。「かれき」これも見当たらない。「枯れ木」のミミクリーか? 「たなかゑび」も記載はないが、思うに、田圃(たんぼ)の側溝が、近くの河川まで繋がっているような場所であれば、田圃でもテナガエビは棲息するし、近年、田圃をやめ、そこを本種の養殖場にして、流通させているケースを確認出来たから、「田中蝦」でも違和感はない。
ウィキに戻す。「利用」の項。『食用に漁獲され、重要な漁業資源となっている地方もある。地域によって様々な漁法があるが、魚のように釣りで漁獲することもできる。肉食が強いので、釣り餌も赤虫やサシ(蛆)、ミミズなどが使われる。他にも魚肉ソーセージ、魚の切り身、イカ等でも釣れる。塩茹でや唐揚げなどで食べられるが、他の淡水魚や淡水性甲殻類と同様に』、『寄生虫を保持する可能性があり、生食はされない』。
ここで言う寄生虫リスクのうち、重篤になる肺吸虫(ウェステルマン肺吸虫:扁形動物門吸虫綱二生亜綱斜睾吸虫目住胞吸虫亜目住胞吸虫上科肺吸虫科 Paragonimus 属ウェステルマンハイキュウ Paragonimus westermani)と肝吸虫(日本肝吸虫:扁形動物門吸虫綱二生亜綱後睾吸虫目後睾吸虫亜目後睾吸虫上科後睾吸虫科後睾吸虫亜科 Clonorchis 属カンキュチュウ Clonorchis sinensis )であろう。重篤になると、前者は、あらゆる臓器組織に迷入することが知られ、脳を犯すことがあり、後者は肝硬変を起こす。
『食用以外に観賞用として飼育する人もいるが、肉食性のため』、『小魚や小型のエビを一緒に飼育すると捕食してしまう。また、多数を一緒に飼育すると』、『共食いや喧嘩を繰り返し結局は1匹だけ残るので、1匹ずつ飼育した方がよい』。以下、「おもな種」の項に七種を挙げるが、本邦産の六種を示す。
テナガエビ Macrobrachium nipponense (『体長10cmほど。朝鮮半島南部、中国北岸、台湾、本州(青森県八戸市以南)、四国、九州に分布するが、九州ではヒラテテナガエビやミナミテナガエビの方が多い。鋏脚が非常に細長く、オスでは体長の1.8倍に達する。地方によっては淡水でも成長できる河川残留型(陸封型)となり、湖やダムで繁殖する個体群もいる』。)
ヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum (平手手長蝦・『ヤマトテナガエビ』(大和手長蝦)『ともいう。体長9cmほど。千葉県以南から台湾までの水のきれいな川に生息する。川をさかのぼる力が強く、流れが速い川の上流部にも生息している。名前のとおり』、『第2胸脚が太くて平たく、胸部の横には細い縦』縞模様『が』、『たくさんある』。)
ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense(南手長蝦・『体長10cmほど。千葉県以南から台湾まで分布し、九州や沖縄で「テナガエビ」といえば』、『この種類を指すことが多い。第2胸脚はヒラテテナガエビよりは細いが、テナガエビより太くて短い。また、胸部の横のもようは太い"m"字型である。ヒラテテナガエビよりも下流域に多い』。)
ザラテテナガエビ Macrobrachium australe(ざら手手長蝦・『体長8cmほどで、テナガエビとしては小型種。長い鋏脚の先端半分に小さな棘が密生し、ザラザラしているので』、『この名がある。太平洋・インド洋の沿岸河川に広く分布し、日本では種子島以南に分布する』。)
ショキタテナガエビ Macrobrachium shokitai (諸喜田手長蝦・『日本で唯一の完全河川残留型(陸封型)のテナガエビで、幼生は海に下らずに稚エビになる。沖縄県西表島の固有種で、台湾や中国に分布する同様の陸封種タイリクテナガエビ M. asperulum 』『から分岐したと考えられている。名前はエビ研究者の諸喜田茂充に対する献名である。環境省レッドリスト準絶滅危惧(2000年)、沖縄県レッドデータブック絶滅危惧II類(2005年改訂)』。)
コンジンテナガエビ Macrobrachium lar (金神手長海老・金神草蝦・『体長15cmにもなり、成長したオスは鋏脚を含めると30cmに達する大型種。オスの鋏脚は鋏部分が外側に大きく曲がる。西太平洋とインド洋の沿岸河川に分布するが、日本での分布域は屋久島以南である』。ネット記載によっては、本邦産テナガエビの最大種とする。)
最後に『別義として、主としてイタリア料理などで用いられるアカザエビ』(これは記載が間違っている。イタリア料理に用いられているのは、十脚目ザリガニ下目アカザエビ(藜海老)科アカザエビ亜科ヨーロッパアカザエビ属ヨーロッパアカザエビ Nephrops norvegicus である)『のことをテナガエビと呼称する場合もある』。『アカザエビは深海域に生息するザリガニ下目に分類される種で、完全に異なる』とある。注意喚起をした通りで、本邦で「アカザエビ」と言った場合、全く別な属・種であり、当該ウィキに拠れば、『千葉県沖から日向灘にかけての太平洋沿岸域に分布し、水深200-400mほどの深海砂泥底に生息する。深海動物だが』、『日本近海だけに分布する固有種で、"Japanese lobster"という英名もある』
アカザエビ亜科アカザエビ属アカザエビ Metanephrops japonicus
である。さらに他に、
サガミアカザエビ Metanephrops sagamiensis (相模藜海老・『体長18cmほど。アカザエビよりやや小型で、鋏脚の先が白い。相模湾以西の本州・四国太平洋岸と九州周辺海域に分布する。生息数の詳細は不明だが、九州ではアカザエビよりも多く漁獲される。』)
ミナミアカザエビ Metanephrops thomsoni (南藜海老・『体長15cmほど。アカザエビによく似ているが』、『小型で、鋏脚に赤の横』縞『模様が4本入る。土佐湾以西の太平洋沿岸、日本海の山陰沖・黄海・東シナ海を経て』、『フィリピン沿岸まで分布する。水深200m前後の砂泥底に』棲息『する。』)
⋯⋯但し、どっちも食したが――美味い!
「『かたヽゑび』【一名、】『かはゑび』【又、】『てんごうゑび』【又、】『てんほうゑび』」これは、
テナガエビ科テナガエビ亜科スジエビ属スジエビ Palaemon paucidens
と考えてよいであろう。頭の二名は「堅田蝦」と「川蝦」で、よい。前者は、芭蕉の句「あまのやハ小海老にまじるいとゞ哉」で知られる通り、現在も琵琶湖の滋賀県大津市堅田(かたた)で名産として知られる。後者は、同種の異名「カワエビ」が知られる。後の二つは、現行では見当たらないが、まずは、当該ウィキを引いて(注記号はカットした。太字・下線は私が附した)から考証する。『スジエビ』(『条蝦・筋蝦』)『は、テナガエビ科に分類されるエビの1種。日本と』、『その周辺地域(南東シベリア、サハリンなど)に分布する陸水エビ(淡水性のエビ)で、釣り餌や食用に利用される』。『広義には』、『スジエビ属 Palaemon に分類されるエビ類の総称としても用いられるが、日本産の種類のうち』、『淡水産なのはスジエビくらいで、ほとんどの種類が汽水域や』、『浅い海に生息する。スジエビには』、『遺伝的に種レベルに分化した3タイプ(A, B, C)の存在が明らかになっている。そのうちDe Haanが記載したタイプはAタイプであり、Bタイプのうち宮城県以北、北海道、日本海側に分布するB-Iタイプはキタノスジエビ( Palaemon septemtrionalis )として新種記載された。宮城県以南に分布するB-IIタイプや奄美大島固有のCタイプについては未だに解決されていない』。『体長はオス35mm、メス50mmほどで、メスの方が大きい。体には7条の黒褐色帯模様が各所に入り、和名もここに由来する。帯模様の太さは個体や地域で若干の変異がある。生きているときは』、『体が』、『ほぼ透明で内臓が透けて見えるが、瀕死になったり、死ぬと』、『体が白く濁る。体型は紡錘形で、頭胸甲・腹部の境界と腹部中央(いわゆる「腰」)が曲がり、頭部が上向き、尾部が下向きになっている』。『額角は細長い葉状で、眼柄や触角、5対の歩脚も細長い。歩脚のうち前の2対は先端に』、『はさみがある鋏脚となっている』。『テナガエビ類に近縁で、テナガエビ類の若い個体と』、『スジエビは』、『よく似ているが、テナガエビ類には』、『複眼後方の頭胸甲上に「肝上棘」(かんじょうきょく)という前向きの棘があり、肝上棘がないスジエビと区別できる。また、同じく淡水にすむヌマエビ類とは』、『大きさが同じくらいで混同されることもあるが、スジエビは』、『明らかに脚が長く、上から見ると』、『複眼が左右に飛び出している』。『樺太、択捉島、国後島、北海道から九州、種子島、屋久島、朝鮮半島南部まで分布する。国内に生息する淡水性エビとしては』、『最も地理的分布が広い種』である。『川や池などの淡水域に生息するが、汽水域にも』、『まれに生息する。釣り餌として利用されることもあり』、『本来』、『分布していなかった水域に持ちこまれ、分布を広げることもある』。『南西諸島のトカラ列島以南には分布しなかったが、1975年、沖縄島西原町』(にしはらちょう)『の池田ダムで最初に確認された。侵入経路としては、コイの養殖種苗と共に関西方面から持ち込まれたと考えられている。1997年時点では』、『沖縄島中部の幾つかの河川とダムで確認されている。沖縄島には』、『本種は分布せず、代わりにテナガエビ類が河川にいる。この種が』、『それらを押しのけて定着出来た理由は幾つか』、『挙げられる。例えば』、『比屋良川』(ひやらがわ)『の場合、川の下流域の汚染がひどく、幼生期に海に下るテナガエビ類は遡上出来ないのに対して、本種は』、『淡水域で生活史を終えられるために定着が可能であった。そのため、その上流の貯水池やダムでもテナガエビ類はおらず、侵入が容易だったと思われる』。
以下、「生態」の項。『昼間は』、『石の下や水草、抽水植物の茂みの中にひそみ、夜になると』、『動きだす。藻類や水草も食べるが、食性は』、『ほぼ肉食性で、水生昆虫や他の小型甲殻類、貝類、ミミズなど様々な小動物を捕食する。大きな個体はメダカなどの小魚を捕食することもある。動物の死骸にも』、『よく群がり、餌が少ないと共食いもする。餌を食べる際は鋏脚で餌を小さくちぎり、忙しく口に運ぶ動作を繰り返す。また、小さな塊状の餌は歩脚と顎脚で抱えこみ、大顎で齧って食べる。一方、天敵はスッポンなどの淡水性カメ類、ウナギ、コイ、ナマズ、ブラックバス、雷魚などの淡水魚、サギなどの鳥類、イタチ、タヌキなどの哺乳類がいる』。
さても、私は、この部分が「てんごうゑび」、及び「てんほうゑび」の語源ではないかと推定する。「てんごう」・「てんほう」(前者の訛(なま)りであろう)とは、「癲狂」(てんきやう(てんきょう)/てんがう(てんごう))で「気がくるうこと・物狂い(ものぐるい)・狂気」の意である。
スジエビの――夜になって、やおら、動き出す、ほぼ、肉食性で貪欲で群がって、食い方も忙しく狂ったように喰らい、共食いさえする習性は――まさに「癲狂」と形容するに相応しいからである。
引用に戻す。『繁殖期は春から秋までで、初夏に盛んに産卵する。交尾行動は夕方から夜間で交尾を終えたメスは直径1mm-2mmほどの緑褐色の卵を』、『複数回に分けて産卵する。この卵はテナガエビ類やヌマエビ類に比べて大粒・少数である。産卵したメスは卵を腹肢にかかえ、1ヶ月ほど保護する。卵から孵化した幼生はゾエア幼生の形態で、20-30日ほどのプランクトン生活をした後に体長5mmほどの稚エビとなって着底する。寿命は2-3年ほどである。産卵周期は日長時間とは関係が無く、水温に依存している』。『スジエビ類は発生に塩分を必要とせず、ミナミヌマエビ』(陸封型である抱卵亜目コエビ下目ヌマエビ(沼蝦)科ヒメヌマエビ(姫沼蝦)亜科カワリヌマエビ属ミナミヌマエビ(南沼蝦) Neocaridina denticulata )『と同じく』、『閉鎖した淡水でも繁殖できるが、幼生期に淡水中での生存率が大きく低下するタイプと、淡水でも塩分ありでも生存するタイプが報告されている』。『淡水中で生存率が低下するタイプでは』、『希釈海水中で高い生存率を示すが、100%海水中では生存しない』。
以下、「利用」の項。『日本では各地でモエビ(藻蝦)、カワエビ(川蝦)などと呼ばれ、淡水域では比較的馴染み深いエビとなっている』。『セルビン』(私は知っているが、知らない読者のために、YouTubeの鹿児島県立博物館の『魚とり名人になろう(2)「セルビン」』をリンクさせておく)・『タモ網などで漁獲され、唐揚げや佃煮、菓子など食用に利用される。殻も軟らかく、食用の際はまるごと使用される。滋賀県には、琵琶湖産のスジエビと』、『大豆を煮た』「えび豆」『という郷土料理がある』。但し、『他の淡水性甲殻類と同様に寄生虫の危険があり、生食はされない。食用の他にも釣りなどの活餌として利用され、地方や時期によってはヌマエビ類などと共に釣具店で多数販売される。メバルやクロダイ、ブラックバス、タイ等を釣る餌として、シラサエビ』(白狭蝦)『という名で知られる』(但し、地方によっては、全くの別種(例えば、クルマエビ科ヨシエビ属ヨシエビ Metapenaeus ensis 等)を指す語でもあるので、注意が必要である)『飼育自体は難しくなく、魚用の固形飼料(市販の淡水魚の餌の沈澱物)なども食べる。食性は肉食の強い雑食性で苔なども食べるが、メダカなどの小さな魚を一緒に飼うと』、『捕食してしまい、餌不足ともなれば』、『共食いも起こるので』、『注意が必要である。小さな水槽で一度に多数を飼育すると』、『徐々に個体数が減るので、むしろ』、『個体数を少なく抑えた方が長期飼育できる。飼育下で産卵させるのは容易だが、幼生や稚エビも共食いするし、親エビによる捕食もある。一般に他種との混泳には向かない。稚エビの頃はヌマエビ』(ヌマエビ科ヌマエビ亜科ヌマエビ属ヌマエビ Paratya compressa )『との区別が難しく、ときにはヌマエビに混じって販売されているケースもあり、肉食性が強いので』、『そのままヌマエビと一緒に育てると』、『ヌマエビを捕食してしまう』。『水産資源化の可能性を探るために養殖試験が行われた事もある』。『1994年に琵琶湖で』、『生け簀中のスジエビが発光するのが発見され、『ホタルエビ』としてマスコミをにぎわした。これは発光細菌の感染によるエビの』「伝染性光り病」『によるものであった』。
以下、「近縁種」の項。『スジエビ属 Palaemon は汽水域や海岸付近の浅い海に多くの種類が生息し、スジエビと同様に活餌や食用で利用される』。『イソスジエビとスジエビモドキの2種類は日本全国の海岸で』、『よく見られる』。
イソスジエビ Palaemon pacificus (磯筯蝦・『体長70mmほどに達し、スジエビよりも大型。体の黒条はスジエビより明瞭で数も多い。また、黒条の他に白い斑点も散在する。インド洋と西太平洋に広く分布する。外洋に面した水のきれいな岩礁海岸に多く、海藻の間や岩陰に多数見られる。タイドプールや埠頭などで目にする機会も多い』)
スジエビモドキ Palaemon serrifer (筋海老擬き・条海老擬き・『体長40mmほど。イソスジエビより小型で、体には黒条が少なく、ほとんど透明である。シベリア東岸からハワイ、インドシナ半島までの北西太平洋沿岸に広く分布する。イソスジエビとほぼ同所的に生息するが、汽水域や内湾ではイソスジエビよりも多い』)
『他に日本産のスジエビ類として以下のような種類がいる』として、九種が挙げられているが、中には、明らかに、近年、国外から侵入した外来種があるので、それは外した。
イッテンコテナガエビ(恐らく「一点小手長蝦」) Palaemon concinnus
スネナガエビ(恐らく「脛長蝦」) Palaemon debilis
ナイカイスジエビ(内海筋蝦) Palaemon gravieri
ユビナガスジエビ(指長筋蝦) Palaemon macrodactylus
オガサワラコテナガエビ(恐らく「小笠原小手長蝦」)Palaemon ogasawaraensis
アシナガスジエビ(脚長筋蝦) Palaemon ortmanni
キタノスジエビ(恐らく「北の筯蝦」) Palaemon septemtrionalis
オキソコスジエビ(海産。恐らく「沖底筯蝦」) Palaemon yamashitai
「『しらさゑび』【一名、】『しらさい』」これは、「本草綱目啓蒙」に、『一種、尋常ノ川ヱビノ形ニシテ、色白キ者ヲ『シラサヱビ』【備州】〉ト云《いふ》。一名『シラサイ』【豫州。】、是、『白蝦』ナリ。』とあり、ネットを調べると、個人ブログ「ツリタノ!」の「きちんと理解しよう!エビ撒き釣りで使うシラサエビ(モエビ、スジエビ)の付け方!」の「エビ撒き釣りの定番餌 シラサエビ(モエビ、スジエビ)」に、『エビ撒き釣りでは大半の場合がシラサエビと呼ばれる琵琶湖産で淡水で生息する小エビが使用されます。』とし、『このシラサエビについては各地方ごとに呼び名が違ったりして、モエビやスジエビと呼ばれることもあります。厳密にはモエビとスジエビは違うものですが、小エビの総称として用いられる事のほうが多いのでここでは分けずにシラサエビ=モエビ、スジエビとして呼称します。』とあったので、前のスジエビに吸収される。
『てんす』「本草綱目啓蒙」を見ると、
*
一種、江州堅田《かたた》ヨリ出《いづ》ル者ハ、長サ、一寸許。一手《いちしゆ》、甚《はなはだ》、長大ニ乄、一手ハ、小ナリ。『堅田《かたた》ヱビ』ト呼《よぶ》。一名『カハヱビ』【江州。】、 『テンゴウヱビ』【備前。】、 『テンボヱビ』、 『テンボウヱビ』、 『カタヱビ』【加州。】。是《これ》、「邵武州府志」ノ『大脚蝦』ナリ。 一種、尋常ノ川ヱビノ形ニシテ、色白キ者ヲ『シラサヱビ』【備州】〉ト云《いふ》。一名『シラサイ』【豫州。】、是、『白蝦』ナリ。「八閩通志」ニ、『白蝦生二江浦中一。』ト云フ。 常ノ川エビハ、淡青・黒色ナリ。豫州ニテ『テンス』ト云、是、『青蝦』ナリ。琵琶湖ノ大エビハ大《おほい》サ、二寸ニ過ギズ。皮・鬚、硬ク、下品ナリ。春・夏・秋、トル、ト云フ。
*
とある。この叙述、前後が、琵琶湖のエビに挟まれていることに気づく。「青蝦」というのが、不審ではあるが、これも、前のスジエビに吸収される、と私は思う。
『たゑび』これは、「田蝦」であるから、蘭山の記載順序から言うと、前の前のテナガエビに吸収されるものと断ずる。御仁によっては、「淡水エビのうち、田圃、及び、その用水路に棲息する淡水エビの総称、さらには、河川・小川・淡水の池沼等に棲息する淡水エビを総括している呼称とも採れるんじゃないか?」と物言いする向きがあろうが、本草家である蘭山が、ここで、そんな十把一絡げの広域一般の、その名を、ここに出すというのは、逆立ちしても、あり得ないと私は思うのである。ただ、以下の記載が、だんだんにテナガエビらしきものでない淡水エビに移っている事実はあるから、論理的には――絶対にあり得ない――とは言えない。しかし、それでは、蘭山の種比定の作業そのものが、全く無化されてしまうことになるので、ここは、一つの閾(しきい)として、かく判断しておく。⋯⋯但し、エビ類専門家でも何でもない河原田氏は、この「たゑび」を淡水エビの総称と考えている事実は、蘭山をお手軽に剽窃する中で、大間違い乍ら、そう考えていると断言出来る。その証拠は、図版の第三番目(左)の左中央下の三個体に「たゑび」としてあるのは、テナガエビではない、普通の淡水エビの図であるからである。
『つげほり』これは、既に表記に疑義を示した。「本草綱目啓蒙」の「ツチホリ」の誤記であり、蘭山は直後で「泥鰕ナリ」と言っていることから、これも本邦の淡水エビならば、前の前のテナガエビに吸収されると断定出来るようにも思われる。
『つゆゑび』これは「本草綱目啓蒙」で「梅鰕」と同じ、と言っている。「(その2)」で前の「泥鰕」ともに中国の名としては不明としたが、やはり、五月から九月が繁殖期で、夏に多く産卵するテナガエビや、春から秋が繁殖期で初夏に盛んに産卵するスジエビも、旬が梅雨に当たると言ってもハズレでない気がする。
『はだかゑび』不詳。白っぽいのを「裸蝦」と言うのであれば、死ぬと、体が白く濁るスジエビが候補と言えるか。
『ぬかゑび』【一名、】『あみ』[やぶちゃん注:ここは絶対に別名としか思えないので、特異的に改行しない。]『あみざこ』【又、】『あめゑび』[やぶちゃん注:同前で改行しない。]『あなヽみ』【又、】『あめこり』【一名、】『つみあみ』これは、当初より、
真軟甲亜綱フクロエビ上目アミ目アミ亜目アミ科イサザアミ(魦海糠)属Neomysis、或いは、イサザアミ Neomysis awatschensis
であろうと踏んでいた。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『体長1センチメートルほどで、典型的なアミ類の形態をしており、頭胸甲の先端が丸く、尾節についても丸みのある長三角形の形をしている。 側縁に約20本程度の刺が並び、末端には長短1対ずつの棘が存在する』。『日本各地の汽水域、淡水域を生息地としている。また、世界的にはロシアのシベリア、北アメリカ太平洋側沿岸域にも分布している』。『本属のアミは本種のみでなく、日本では5種が報告されており、地域によっては』、『複数種が同じ水域に棲息している』。『古くより食用とされ、佃煮、天ぷら、煮物やその他かき揚げ等にもされ食されている。飼料として生体、または冷凍したものを「ホワイトシュリンプ」の名称で販売されている』とある。イサザアミ属五種は「BISMaL」で調べたところ、
クロイサザアミ Neomysis awatschensis
キタイサザアミ Neomysis czerniawskii
ニホンイサザアミ Neomysis japonica
エゾイサザアミ Neomysis mirabilis
トゲイサザアミ Neomysis spinosa
であった(漢字表記は判りますよね?)。]
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