立原道造「詩集 優しき歌」再起動版 詩集 優しき歌 Ⅰ ひとり林に⋯⋯ Ⅱ 眞冬のかたみに⋯⋯
[やぶちゃん注:この再起動版に就いては、初回の冒頭注(詳細なプロジェクトの経緯及びオリジナルな特徴を述べているため、かなり長い)を見られたい。過去にランダムに電子化注したものは、『カテゴリ「立原道造」創始 /「ひとり林に‥‥」(草稿) 及び その決定稿「眞冬のかたみに」 並びに 別篇「ひとり林に‥‥」』である。
今回の底本は、国立国会図書館デジタルコレクションの「立原道造全集 第一卷 詩集I」(一九七一年角川書店刊)を用いる。総表題ページはここで『優しき歌 I 風信子叢書 第四篇』(下方の二つの附属表記は底本ではポイント落ち。「風信子」は「ヒアシンス」と読む)とあり、中パート表題はここ、本篇はここで、編註はここである。それに拠れば、『「都新聞」 昭和12年9月12日号』で、その後に、『*初出の組原型は次のようである。』として、初出の記載が、全篇、載っている。新聞の記事枠の制限から一行を十七字として改行が行われている。まず、それを、【初出「都新聞」表示形】として、その一行十七字改行と全く同じ形で示す。さらにその後に、底本本文の『テキストは山田書店版第一巻に従った。』とする。その当該書籍の当該部はここである。但し、そちらでは、三ヶ所のリーダが四点「‥‥」になっているが、そこは堀內氏は採用せずに、六点リーダとしておられる。至当である。更に、『草稿詩「ひとり林に⋯⋯」(本巻収)を異文に持つ。』とする。
これは、先般、「立原道造草稿詩篇 ひとり林に⋯⋯」でオリジナルに、【初稿】・【草稿】・【最終決定稿】として電子化してある。
更に、『*gewidmet (独) widmen 献げるの意の過去分詞。』とする。この“gewidmet”は音写すると「ゲヴィッドメット」で、原型“widmen”は「ヴィトメン」である。また、註の最後に、『Heinrich Vogeler(ハインリッヒ・フォーゲラー)は、Rainer Maria Rilke(リルケ)のヴォルプスヴェデ時代の友人画家。『風景畫論』(Worpswede)中に紹介されている。』とする。当該ウィキがあるが、日本語のそれは、杜撰である。英文ウィキを、お薦めする。
更に戻ると、『*制作時は昭和12年2月と想定する。』とあり、加えて、『〔資料〕昭和12年1月20日付・神取』(これは「神保」の誤記か誤植である)『光太郎宛』(底本全集「第五卷 書翰」のここの「三五三」)、『同月31日付・柴岡亥佐雄宛』(同前のここの「三六六」)『および2月8日付・田中一三宛書簡。』(同前のここの「三七三」)とある。
当初、煩を厭わず、改稿・改稿(別稿)・初出表示形・原決定稿を含む推敲の跡を追うために、「立原道造草稿詩篇 ひとり林に⋯⋯」も入れ込んだものにしようと思ったが、これは、前の『立原道造「詩集 優しき歌」再起動版 詩集 優しき歌 Ⅰ ひとり林に⋯⋯ Ⅰ ひとり林に⋯⋯』と混雑し、却って、訳が分からなくなる虞れが強くあるため、取り止めとし、すっきりと、【初出「都新聞」表示形】・【最終決定稿】の順で電子化する。]
【初出「都新聞」表示形】
眞冬のかたみに⋯⋯
Heinrich Vogeler gewidmet
追ひもせずに 追はれもせずに 枯木
のかげに
立つて 見つめてゐる まつ白い雪の
おもてに ながされた 私の影を―
―(かなしく 靑い形は 見えて來
る)
私はきいてゐる さう! たしかに
私は きいてゐる その影の うた
つてゐるのを……
それは淚ぐんだ鼻聲に かへらない
昔の過ぎた夏花のしらべを うたふ
⦅あれは頰白 あれは鶸 あれは 樅
の樹 あれは
私⋯⋯私は鶸 私は 樅の樹⋯⋯⦆
こたへもなしに
私と影とは 眺めあふ いつかもそれ
はさうだつたやうに
影は きいてゐる 私の心に うたふ
のを
ひとすぢの 古い小川のさやぎのやう
に溢れる泪の うたふのを⋯⋯雪の
おもてに――
[やぶちゃん注:これは、一行字数以外に、改行禁則によって、送りが、微妙な形になってしまっている。
「鶸」これは簡単には注が出来ない。私の「和漢三才圖會第四十三 林禽類 鶸(ひわどり) (カワラヒワ・マヒワ)」を参照されたい。但し、軽井沢と時期から、スズメ目スズメ亜目スズメ小目スズメ上科アトリ科ヒワ亜科カワラヒワ(河原鶸)属カワラヒワ亜種カワラヒワ(或いは亜種コカワラヒワ)Carduelis sinica minor の可能性が最も高いと思われる。]
【最終決定稿】
Ⅱ 眞冬のかたみに⋯⋯
Heinrich Vogeler gewidmet
追ひもせずに 追はれもせずに 枯木のかげに
立つて 見つめてゐる まつ白い雪の
おもてに ながされた 私の影を――
(かなしく 靑い形は 見えて來る)
私はきいてゐる さう! たしかに
私は きいてゐる その影の うたつてゐるのを⋯⋯
それは淚ぐんだ鼻聲に かへらない
昔の過ぎた夏花のしらべを うたふ
⦅あれは頰白 あれは鶸 あれは 樅の樹 あれは
私⋯⋯私は鶸 私は 樅の樹⋯⋯⦆ こたへもなしに
私と影とは 眺めあふ いつかもそれはさうだつたやうに
影は きいてゐる 私の心に うたふのを
ひとすぢの 古い小川のさやぎのやうに
溢れる泪の うたふのを⋯⋯雪のおもてに――
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