立原道造「詩集 優しき歌」再起動版 詩集 優しき歌 Ⅰ 淺き春に寄せて / 「詩集 優しき歌 Ⅰ」各個詩篇電子化注~了
[やぶちゃん注:この再起動版に就いては、初回の冒頭注(詳細なプロジェクトの経緯及びオリジナルな特徴を述べているため、かなり長い)を見られたい。過去にランダムに電子化注したものは、「淺き春に寄せて 立原道造」である。
今回の底本は、国立国会図書館デジタルコレクションの「立原道造全集 第一卷 詩集I」(一九七一年角川書店刊)を用いる。総表題ページはここで『優しき歌 I 風信子叢書 第四篇』(下方の二つの附属表記は底本ではポイント落ち。「風信子」は「ヒアシンス」と読む)とあり、中パート表題はここ、本篇はここで、編註はここである。それに拠れば、本詩の初出は『「四季」第25号 昭和12年3月号(2月20日刊)』とある。
これを以って、『優しき歌 I 風信子叢書 第四篇』の全詩篇の各個電子化注を終わる。次回は、全詩篇をセットで一記事で示し、その後に、底本の全篇の持つ特性を考察する。]
淺き春に寄せて
今は 二月 たつたそれだけ
あたりには もう春がきこえてゐる
だけれども たつたそれだけ
昔むかしの 約束はもうのこらない
今は 二月 たつた一度だけ
夢のなかに ささやいて ひとはゐない
だけれども たつた一度だけ
そのひとは 私のために ほほゑんだ
さう! 花は またひらくであらう
さうして鳥は かはらずに啼いて
人びとは春のなかに笑みかはすであらう
今は 二月 雪に面(おも)につづいた
私の みだれた足跡⋯⋯それだけ
たつたそれだけ――私には⋯⋯
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