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2026/06/09

阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「餅米代」

[やぶちゃん注:底本はここから。句読点・記号を附加・変更し、段落を成形した。]

 

 「餅米代《もちごめしろ》」 益頭郡《ましづのこほり》濱當目村《はまたうめむら》にあり。傳云《つたへいふ》、

「濱當目村、大崩《おほくづれ》の麓《ふもと》の海を『鐘が淵《かねがふち》』と云《いふ》。

 是《これ》、虛空藏堂《こくうざうだう》の鐘《かね》也。

 徃昔《わうじやく》、山崩《やまくづれ》の時、落入《おちいり》て、再度《ふたたび/さいど》、あがらず。

 此所《このところ》、常は、漁事《りやうじ》を禁じて、舟を、よせず。

 もし、大卅日《だいの さんじふにち》に到《いたる》まで、魚獵《ぎよれふ》なき時、爰《ここ》に、網を下《おろ》せば、極《きはめ》て、大獵《たいれふ》あり。手を、むなしくせざるが故に、『餠米代(もちごめしろ)』と號《なづけ》て、漁父等《ぎよふら》、祕藏の所とす。云云《うんぬん》。」。

 是もまた、一奇なる哉《かな》。

 

[やぶちゃん注:「濱當目村」何度も出た、現在の焼津市浜当目(はまとうめ:グーグル・マップ航空写真)。ここで言っている「鐘が淵」は、そこにある「御座穴」の周辺か、その沖の旧呼称であろう。ここ陸側のピークは「虚空蔵山(こくうぞうさん)」で、そこには虚空蔵菩薩を祀る曹洞宗の当目山香集寺(こうしゅうじ)がある。当該ウィキに拠れば(注記記号はカットした)、当寺は『815年(弘仁6年)、弘法大師空海によって開山された。当初は真言宗の寺で「香信楽寺」という名称であったが、戦国時代の戦乱で焼失した。1617年(元和3年)、曹洞宗の「香集寺」として再興された』。『当寺の本尊は虚空蔵菩薩で、聖徳太子作と伝えられている。「日本三大虚空蔵尊」の一つとしても挙げられている』。『毎年223日には、縁日として「ダルマ市」が開かれている』とある。

「餠米代(もちごめしろ)」これは、殺生をしている漁夫たちが、稲の「稲霊(いなだま)」にあやかって、漁獲のそれを虚空蔵菩薩が下さったものと考えたものであろう。

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