阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「蛇玉」
[やぶちゃん注:底本はここから。句読点・記号を附加・変更し、段落を成形した。]
「蛇玉《へびだま》」 止駄郡《しだのこほり》瀨戶谷村《せとのやむら》、農夫某《ぼう》の家にあり。傳云《つたへいふ》、
「當村の農夫某の祖の時、屋敷內に、或日《あるひ》、大小の蛇、數百、集りて、相戰ふ事、あり。已に勝劣を分《わか》つに到る頃、一《ひとつ》の大蛇《おほへび》、薄紫色の玉《たま》を落《おと》せり。其形、鷄卵《けいらん》の如し。農夫某、密《ひそか》に拾ひ取《とり》て、家に藏《をさ》む。先年、領主、尋《たづね》ありしに、無《なき》よしを訴《うつたへ》しかば、今にありといへども、祕《ひ》して、人に見せず。是を『蛇玉《へびだま》』と云《いへ》り。此地、蛇合戰、蛙合戰、螢合戰、徃々《わうわう》あり。見る者、最《もつとも》多し。
[やぶちゃん注:「止駄郡瀨戶谷村」現在の藤枝市瀬戸ノ谷(せとのや:グーグル・マップ航空写真)。殆どが、山林である。
よく判らんが、この場合の「蛇玉」は、ヘビが捕食した動物の半消化したもの、或いは、所謂、毛玉のようなものの硬化したものであろう。蛇自身に生じた病的な内臓等の異物の線は低いように思う。
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なお、関係ないが、私は幼少の時、「蛇花火」と呼んでいたものが、正式には「蛇玉(へびだま)」と呼ぶことを、今回、初めて知った。ウニウニと膨らんでくるグロさが、面白かった。その記事を読みたくなり、調べたところ、「マイナビ」の中村未来氏の書かれた「地味~な花火『蛇玉』の、意外な歴史」が、よく書かれてあるので見られたい。そこに、『当初』は『「ファラオの蛇(Pharaoh's Serpent)」と呼ばれた。』とあり、『1821年に科学者ウェラーが報告した、チオシアン酸水銀が加熱されると何倍かの体積となるという特性を利用したがん具煙火が蛇玉の原点。水銀化合物であることから現在制作は禁止されている。』とあったので、調べてみたところ、この人物はドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラー( Friedrich Wöhler 一八〇〇年~一八八二年)であった(彼のウィキは、ここ)。短いが、「蛇玉」のウィキもある。]
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