阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「楓樹の奇火」
[やぶちゃん注:底本はここから。句読点・記号を附加・変更し、段落を成形した。]
「楓樹《かへでのき/ふうじゆ》の奇火《きくわ》」 益頭郡《ましづのこほり》、田中城にあり。傳云《つたへいふ》、
「當城、一《いとつ》の郭內《かくない》に『新右衞門屋敷《しんゑもんやしき》』と字《あざな》する空地《あきち》、あり。
徃昔《わうじやく》、本多《ほんだ》豊前守某《なにがし》、家老《からう》野口新右衞門某、爰《ここ》に住居のとき、園中《ゑんちゆう》に、一《ひとつ》の大楓《おほかへで》、あり。
此木の梢《こづえ》より、每夜、奇火、燃出《もえいで》たり。
後《のち》、住む者、なく、終《つひ》に、空地と、なれり。
楓は、今に繁茂し、奇火も又、徃々《わうわう》、見る者、あり。
[やぶちゃん注:「楓樹」ムクロジ目ムクロジ科カエデ属 Acer で、種は多いが、特に本邦で代表的な種は、紅葉(もみじ)の代表種である、
イロハモミジ(伊呂波紅葉) Acer palmatum
である。
「新右衞門屋敷」恐らく藤枝市の公式パンフレットと思われる「田中城散策コース」(PDF・『〔第5版/平成22年4月〕』のクレジット有り)の中に、地図入りで解説があるが、その『三之丸土塁と家老屋敷跡』に、『田中城の三之丸を取り囲むように築かれたのが、三之土塁です。記録によれば、総延長544間(約980mありました。三之丸には、田中藩本多家』(ほんだけ)『の家老屋敷3軒の広大な敷地がありました。この場所は、本多家譜代の家老・馬渕新右衛門の屋敷に当たります。』とあった。さても、本文注の「家老野口新右衞門某」とあるのだが、
この「野口」=「のぐち」は、「馬渕」=「まぶち」の誤り
ではあるまいか? 識者の御意見を俟つ。]
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