河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注 中卷(八)乾貝並貝柱の說(その19) 図版2
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの右ページ。四方罫線の右外に以下の図群の綜合標題が、ここにある。前のハマグリは、貝柱を別個に貝柱製品にはしないからである。現在でも、見かけない。ハマグリは可食部に比して貝柱自体は小さく、単独の製品にするほどの量が採れず、歩留まりが悪いからであるである。
図の順序であるが、ここ、種で纏まりをなしているだけで、配置に意味を感じないから、特異的に順番はランダムとした。]
【図版2】
「乾貝《ほしかひ》并《ならび》ニ乾貝柱《ほしかひはしら》圖」
■「あけまきかひ」「二年生」
「自然形《しぜんけい》」
「外靣《がいめん》」
「內靣《ないめん》」
「筑後國《ちくごのくに》山門郡《やまとのこほり》産」
[やぶちゃん注:斧足(二枚貝)綱異歯亜綱Heterodontaマルスダレガイ(丸簾貝)目マテガイ(馬刀貝)上科ユキノアシタガイ(雪の朝貝)科Pharidaeアゲマキガイ(揚げ巻貝)属アゲマキガイ Sinonovacula constricta の貝殻の図であるが、この絵師は、貝類の専門家ではない。何故なら、「外靣」とする図は右殻(うかく)の貝殻の外面ではあるが、殻頂(かくちょう)を下方にして描いてしまっているからである。研究者や図鑑の担当絵師は斧足類の場合、貝殻の外側を描く時は、必ず、殻頂を上にした右殻を描く(ここでは「内面」図も、それに合わせて右殻であるが、殻頂が下になっている)。因みに、一般には、殻頂から垂線を降ろして、貝殻が小さい方が貝の前部で、そこから斧足を出し、口は、この前部の殻頂の寄りの箇所にある。反対の、殻が広くなっているのが後部で、ここから水管を出すのである。この場合は、御丁寧に殻っだけの図も、「自然形」と添えてあるのが、微笑ましい。解説ページは「(その3) 乾揚卷」である。
「筑後國山門郡」現在の福岡県の、柳川市の大部分と、みやま市の大部分に相当する。所謂、有明海の湾奥の北東である(孰れもグーグルマップ)。]
■「ほしあけまき」
「三年生」
「自然形」
■「まてかひ」
「二分の一。」
「外靣」
「內靣」
「筑後國《ちくごのくに》産。」
[やぶちゃん注:異歯亜綱Heterodontaマルスダレガイ(丸簾貝)目マテガイ(馬刀貝)上科マテガイ上科マテガイ科マテガイ属マテガイ Solen strictus で間違いない。ここでは、殻頂を右にして、左右の殻が靭帯で繋がっている形で、外面図と内面図を描いている。解説ページは「(その4) 乾馬刀」である。
「二分の一。」は図の縮小スケール。]
■「ほしまてかひ」
「二分の一。」
[やぶちゃん注:この図は「乾馬刀」四個体なのであるが、私は実際に「乾馬刀」の実物を見たことがないのだが、この図、ちょっと気になる。多くの読者は、上の二図から、そこから剥離して乾した肉部が、上の殻に、同じ方向で入っていたものであると思うに違いない。しかし、生体を見た私の記憶では、斧足は、ずんぐりとした円筒の上、靭帯側直近に擬宝珠のように丸く鈍に尖った形で突き出るのである。而して、反対側には、文字通り、水管(入水管と一つに纏まった形で筍(たけのこ)型で、ヌルりと縞々をみせてだらんと出ている。
ところが、この四個体、剥いたものを乾したもので、収縮が起こっており、どうも、どっちが、どっちなのか、よく判らないのである。しかし、個人的には斧足は明らかに水管より太(ぶ)っとくなると推理するのである。而して、イラストレーター・著作家大内正伸氏のブログ「囲炉裏暖炉のある家 tortoise+lotus studio」の「マテ貝と鶏肉の干物」でブログ主の手製の素敵な写真をやっと見つけた! ご覧あれ! 明らかに擬宝珠と棒の違いがあるのだ! 「市販の貝の干物ほどに硬く仕上った。」と述べておられるので、最も信用性が高い。
そういう見地から見ると、この乾したマテガイの四図は、どうも正確な描写をしていないのではないか? と、強く疑われるのである。しかも、★向きを一致させていないと私は断ずるものである。
私の見る限りでは、
・一番上と二番目は、右が水管側。
・三番目は、右が斧足。
・四つ目は、恐らく左が斧足。
と推定される。識者の御意見を俟つものである。]
■「同上」
[やぶちゃん注:二個体ともにアゲマキの肉部分を乾したものであるが、上図が、水管を左にしてあり、下図が、逆に水管を右にしてある。]
■「しほふき」
「九州名
うはかひ」
「自然形」
「ほし
うば
かひ」
「自然生」
[やぶちゃん注:解説ページは「」である。しかし、
✕この各図も各キャプションともに――「レッド・カード」並の完全にグチャグチャ+メチャクチャ――である!
まず、大表題の「しほふき」、即ち、
✕異歯亜綱バカガイ科バカガイ属シオフキ Mactra veneriformis
の貝殻では――ない!
✕何故なら、シオフキを描いたら、こんなに黒く染め得ないからである。
では何か? これは、
○異歯亜綱マルスダレガイ目バカガイ超科バカガイ科バカガイ亜科ウバガイ属ウバガイSpisula sachalinensis(読者のためには、既に先行で示した「ホッキガイ」の方が判りが良い)なのである!
しかも、又しても、この図も殻頂が下で、違和感がある。
因みに、図の右側が、微かに出張って見えるので、これは右殻である。
✕さらに痙攣的に間違っているのは、「九州名」「うはかひ」である!
✕九州にはホッキガイは棲息しない
のだ! どうやったら、こんな図と解説が出来るのだろう!?! 理解に苦しむ!!!
下の二個体の「ほしうばかひ」というのは、モノクロモームではあるが、右の上方に突き出でている形状が、ウバガイ=ホッキガイの干物と一致している。しかし、図を真っ黒に塗るか? って気はする(これは、このページの全ての製品に対して言える)。因みに、私は、シオフキの干物を見たことがないので、比較は出来ない。異論のある方は、議論しようではないか!
「自然生」「生」はママ。「形」の誤字であろう。]
■「あさりかひ」
■「ほしあさり」
「自然形」
[やぶちゃん注:これ、また真っ黒であるが、以下の二種には、こうした個体もある。貝殻(また、逆様やなんかい!)から、
斧足(二枚貝)綱マルスダレガイ(丸簾貝)目マルスダレガイ科アサリ(浅蜊)属アサリ Ruditapes philippinarum
或いは、
アサリ属ヒメアサリ(姫浅蜊)Ruditapes variegata
の孰れかである。「ほしあさり」二個体も、形状は乾燥させた上記の二種と一致する。解説ページは「(その8) 乾蜊」である。
*
ともかくも、このページの絵師は最悪中の最悪である!]
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