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2026/08/16

河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注 下卷(九)乾魚並に䀋魚の說(その10) 乾鰈

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここから。]

 

   乾鰈《ほしかれひ》

鰈(かれひ)ハ、「倭名鈔」には『王餘魚(わうよぎよ)』を『加禮比(かれひ)』と訓(くん)し、「閩書」に『比目魚(ひもくぎよ)』とし、『「比(ひ)」は「並(ならび)」なり。東方にありて、其名(そのな)を「蝶(てう)」と曰(いふ)。』とす。此外(このほか)、種々(しゆじゆ)の異名あるも、形狀によりて、名(なづ)くるもの、多し。「北戶錄(ほくとろく)」には『鰜(けん)』と謂ひ、「吳都賦(ごとうふ[やぶちゃん注:ママ。誤植であろう。])」には『魪(かい)』といひ、「上林賦(じやうりんふ)」にハ、『魼(きよ)』といふ。閩廣(みんくわう)は『鞋底(けいてい)』と名《なづ》け、「臨海志」は『婢簁(ひと)[やぶちゃん注:底本では「簁」は(たけかんむり)の下は「徒」となっており、ルビは「ひと」となっているのだが、これは後注で示すが、「徙」で、音は「シ」でないと、おかしい。東洋文庫版もそうなっている。されば、特異的に「簁」に変え、ルビも「ひし」と差し替えた。]』に、「臨海風土記(りんかいふうどき)」は『奴屩(どきやう)』に、「南越志」ハ『南版(なんはん)』とし、「南方異物志」[やぶちゃん注:底本では「南」がなく、「方異物志」とするのだが、これは明らかに脱字であるから、「南」を補った。東洋文庫版もそうなっている。]は『箬葉(にやくよう[やぶちゃん注:ママ。「じやくえふ」が正しい。])』に、「朱厓記(しゆかいき[やぶちゃん注:ママ。「しゆがいき」が正しい。])」にハ『王餘魚(わうよぎよ)』の字を用(もちひ)たり。

而して、此ものは、本邦の沿海に、悉(ことごと)く產し、種類、尤(もつとも)多く、大(おほひ)さ、一、二尺、或(あるひ[やぶちゃん注:ママ。])は、五、六寸、裏(うら)の白皮(しらかわ[やぶちゃん注:ママ。])に、黑點、あるものを『星蝶(ほしかれい[やぶちゃん注:ママ。])』といひ、大(だい)なるもの、尺許(ばかり)、或は、七、八寸より、一、二寸に至るもの、表の黑皮、鰭(ひれ)の兩邊、上より下に向つて、黑片石子(こくへんせきし)あり、『石蝶(いしかれい[やぶちゃん注:ママ。以下、多くあるが、ママ注記は附さない。])』といふ。六、七寸に過(すぎ)ず。形(かた)ち、尋常の小蝶(こかれい)に比(ひ)すれば、狹少(けうしよう[やぶちゃん注:ママ。「けふせう」が正しい。])にして、肉、薄く、卵(たまご)、腹(はら)に滿(み[やぶちゃん注:ママ。「みつ」の脱字。])るといへども、味(あじわ)ひ、佳(か)ならす[やぶちゃん注:ママ。濁点落ち。]。『藻蝶(もかれい)』、又、『霜月蝶(すもつきかれい)』といふ。形、略(ほ)ぼ、同じ表裏(おもてうら)、あり。鱗(うろこ)なきもの、號(なづ)けて『雌板蝶(《め》いたひらめ[やぶちゃん注:ママ。後注する。])』といふ。又、『片口蝶(かたくちかれい)』といふものあり。其(その)表裏(ひようり[やぶちゃん注:ママ。])、相反(あいはん[やぶちゃん注:ママ。])するものを『平目(ひらめ)』といふ。大なるもの、二、三尺許(ばかり)に至る。

[やぶちゃん注:本書の出版時、未だ、近代魚類学上のカレイ類とヒラメ類の弁別認識の確立が科学的に明確でなく、前代の古典的博物学に頼るほか、なかったから、以上の記載に多くの違和感があるのは仕方がないことである。主題に従い、カレイ類から示すと、

条鰭綱アジ目カレイ亜目カレイ科 Pleuronectidae

は、現在、「BISMaL」に拠れば(ツリーの分岐記載の種タクソンに疑問があったが、上位タクソンを優先した。また、和名の漢字表記は「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の各種のページを概ね参考にした)、日本産では、まず、

ムシガレイ(虫鰈)亜科Eopsettinae

オヒョウ(大鮃・大兵)亜科Hippoglossinae

アカガレイ(赤鰈)亜科Hippoglossoidinae

カレイ(鰈)亜科Pleuronectinae

の五亜科に分かれ(本邦種まで示す。以下同じ)、

ムシガレイ亜科は、

・ムシガレイ属ムシガレイ Eopsetta grigorjewi 

 オヒョウ亜科は、

・オヒョウ属オヒョウHippoglossus stenolepis

アカガレイ(赤鰈)亜科は、アカガレイ属Hippoglossoidesの、

・アカガレイ(赤鰈)Hippoglossoides dubius

・ウマガレイ(馬鰈) Hippoglossoides elassodon

・ドロガレイ(泥鰈)Hippoglossoides robustus

大所帯のカレイ亜科は、

・ウロコメガレイ(鱗眼鰈)属ウロコメガレイAcanthopsetta nadeshnyi

・アブラガレイ(油鰈)属アブラガレイ Atheresthes evermanni

・ソウハチ(宗八・惣八)属ソウハチCleisthenes pinetorum

・サメガレイ(鮫鰈)属サメガレイClidoderma asperrimum

・ミギガレイ(右鰈)属ミギガレイ Dexistes rikuzenius

・シモフリガレイ(霜降鰈)属シモフリガレイ Embassichthys bathybius

・ヒレグロ(鰭黒)属ヒレグロGlyptocephalus stelleri

・イシガレイ(石鰈)属イシガレイKareius bicoloratus

・シュムシュガレイ(占守鰈)属シュムシュガレイLepidopsetta bilineata

・シュムシュガレイ属アサバガレイ(浅場鰈・浅羽鰈) Lepidopsetta mochigarei

スナガレイ属Limanda

 ・コガネガレイ(黄金鰈)Limanda aspera

 ・ハナガレイ(漢字表記不詳。個人的には英名が“ longhead dab”であり、学名で写真を複数視認したところ、他の種類に比べて、吻(口先・鼻先)が、やや突き出ていることから、「鼻鰈」であろうと思う) Limanda proboscidea

 ・スナガレイ(砂鰈) Limanda punctatissima

 ・カラフトガレイ(樺太鰈)Limanda sakhalinensis

ババガレイ(婆鰈・母鰈)属

 ・ババガレイ Microstomus achne

 ・ヌマガレイ(沼鰈)属ヌマガレイ  Platichthys stellatus

 ・ツノガレイ(角鰈)属ツノガレイPleuronectes quadrituberculatus

メイタガレイ(痛鰈・目板鰈)属

・メイタガレイ Pleuronichthys cornutus

・ナガレメイタガレイ(流目痛鰈・流目板鰈)Pleuronichthys japonicus

マガレイ(真鰈)属

 ・マガレイ Pseudopleuronectes herzensteini

 ・ クロガレイ(黒鰈)Pseudopleuronectes obscurus

 ・クロガシラガレイ(黒頭鰈) Pseudopleuronectes schrenki

 ・マコガレイ(真子鰈)Pseudopleuronectes yokohamae

・カラスガレイ(烏鰈)属カラスガレイReinhardtius hippoglossoides

・ヤナギムシガレイ(柳虫鰈・柳蒸鰈)属ヤナギムシガレイTanakius kitaharae

マツカワ(松皮・松川)属

 ・マツカワVerasper moseri

 ・ホシガレイ(星鰈) Verasper variegatus

計三十二種である。

問題は、ここでは、しかし、河原田氏は、

〘✕?〙「形、略(ほ)ぼ、同じ表裏(おもてうら)、あり。鱗(うろこ)なきもの、號(なづ)けて『雌板蝶(《め》いたひらめ)』といふ。」という、奇体な名前と記載を記している。しかし、この「雌板鰈」「めいたひらめ」という「もの」は、これ、調べても、掛かってこず、異名としても見つからず、種を同定出来ないものなのである。

?〙しかも、「其(その)表裏(ひようり[やぶちゃん注:ママ。])、相反(あいはん)するものを『平目(ひらめ)』といふ。大なるもの、二、三尺許(ばかり)に至る。」と、明らかに「鮃」(=ヒラメ類)を一緒に記しており、最悪なことに、『雌板蝶(《め》いたひらめ)』という「鰈」に「ひらめ」とルビしてしまっているのである。

✕?〙この「ひらめ」のルビは

――うっかり誤ったものか?

それとも、

――確信犯なのか?

全く、判らない、のである。

 まあ、

〘★?★〙河原田氏は、平然と、以上の現在の我々には理解出来ない記載をしているとするなら、

■彼は、広義の「ヒラメ類」=カレイ亜目ヒラメ(鮃)科 Paralichthyidae・ダルマガレイ科 Bothidaeも、広義の「カレイ類」に包括している

としか読めないのである。

★されば、ここで河原田氏は、カレイ亜目ヒラメ科ヒラメ属ヒラメ Paralichthys olivaceusに代表されるヒラメ類――正確に述べるならば、

〙ヒラメ科 Paralichthyidae 及びダルマガレイ科 Bothidae のヒラメ類をカレイ類と一括して認識している

と採る以外はないのである。或いは、

――これは当時の一般人の一般認識であった――

のかも、知れない。

 以上で、私が注をするに、困惑せざるを得ないことが、お分かり戴けたと思う。

 されば、当初は、広義の「カレイ類」を先にし、次に、広義の「ヒラメ類」を説明するつもりであったが、それは、諦めることにした。何故なら、「ヒラメ類」を解説するとなると、まず、「カレイ類」と同じ程度の分量が必要になるであろうからである。

 取り敢えず、ウィキの「ヒラメ」の、最低必要と見做した一部だけを引用する。「特徴」の中の前半部である(注記記号はカットし、太字にした)。

   *

太平洋西部(千島列島、樺太、日本の北海道から九州)、朝鮮半島などの沿岸から南シナ海まで)に分布。最大で全長1m、体重10kgほどになる。他のカレイ目の魚と同じように左右に扁平な体型をしていてカレイと区別が付きにくいが、俗に「左ヒラメに右カレイ」と言われるように、ヒラメの目は両目とも頭部の左側半分に偏って付いているのが大きな特徴である。また、ヒラメはカレイと比べて口が大きく、歯も11つが大きく鋭い。

ヒラメは海底で両目のある体の左側を上に向けて生活しているため、その両目は常に上の方を向いている。

ヒラメという名が現れたのは14世紀ごろだが、日本では19世紀以前にはカレイとヒラメは区別されておらず、大きいものをヒラメ、小さいものをカレイと呼んでいた。はっきりと別種として扱った文献は小野蘭山の『本草綱目啓蒙』(1803)が初出である。

   

 以下、ウィキの「カレイ」を部分引用する(注記記号はカットした。なお、「分類」の項は、既に冒頭で精密なものを示したので省略した。また、注意箇所と、ヒラメとの相違解説には、太字・下線を私が附した)。カレイ類は『砂や泥の海底に生息し、海底に潜むのに適した平たい体をしており、目が体の右側の面に2つともある特徴的な形態をしている。北極海、太平洋、インド洋、大西洋の沿岸の浅い海から水深1000mの深海までに生息する海水魚。汽水に生息する種もいる』。『体は平たく、両目は、ヌマガレイなどの一部の例外を除き、原則として体の右側の面に集まっている。逆にヒラメ類では、目は体の左側側面に集まる。しかし、個別の個体では偶発的に逆となる変異現象(reversal of sides)がある。両目のある側を上にして海底に横向きになり、砂や泥に潜るなどして潜む。体の目のある側は黒褐色から褐色。特有の斑点を持つものもある。この体色は体表にたくさん散らばっている色素細胞である黒色素胞(メラノフォア)』(=melanophore・メラニン顆粒を含む色素胞)『の大きさを変えることにより、周囲の環境に合わせて変えることができ、保護色となる。両目のない側は白色。背ビレと尻ビレが長く、背ビレは頭部からはじまり尾ビレの根元まで、尻ビレは、頭部のそばにある小さな腹ビレから尾ビレの根元まで続く』。『幼生は目が普通の魚と同様に左右に分かれて付いており、体も平たくない。成長とともに変態し、目がだんだんと右側に移動していき、体が平たくなり、また浮き袋がなくなり底生の成体となる。カレイは概して長寿命で、ヨーロッパ産の1種 プレイス(European plaice)』(日本語名「ツノガレイ」=Pleuronectes platessa )『で50年、オヒョウで40年などの記録がある』。『主に肉食性で、小魚や海底の無脊椎動物を食べるが、似たような外見でフィッシュイーター』(Fish-eater)『であるヒラメとは異なり、捕食行動は』、『やや大雑把である。そのため、ヒラメ釣りでは』、『生き餌の イワシ、キス、 キビナゴ等の小魚や俊敏な動きのルアーを用いるのに対し、カレイ釣りではゴカイ・イソメ、アサリのほか、鈍重な動きのワームを用いる。冬の釣りの対象魚として知れられる』。以下、「名称」の項。『日本語の「かれい」は「唐鱏」(からえい)または「涸れ鱏」の転訛とされる。漢名は「鰈」であるが、ヒラメとの混称で「偏口魚」、「比目魚」などとも呼ばれる』。『漢字の「鰈」は、発音を表す「枼」と意味を示す「魚」とを組み合わせた形声文字である(なお、「枼」は葉に由来し』、『薄いものの意味だと説明されることがあるが、これは民間俗説に過ぎない』(ここには[独自研究?]の要請が附されてある)。『王が魚を半分食べたところを水に放すと』、『泳ぎだした』、『との中国の故事から「王余魚、王餘魚」とも書くが、ヒラメをも含めた言い方である。このほか「鰕魿」、「嘉列乙」、「嘉鰈」、「魪」、「鮙」、「鰜魚」などの漢字表記もある』。『カレイはフランス語ではリマンド(limande)』(リマァーン(ドゥ):「女性の胸が貧弱である/卑屈な態度をとる」が原義)『。英語では、カレイ、ヒラメ、シタビラメなどカレイ目の魚を "flatfish" と総称する。そのうち、カレイ、ヒラメは「flounder」』(フゥラウダァ)『と呼び、体の右側に目が寄っているカレイ科などの魚を、「righteye flounder」、ヒラメ科、ダルマガレイ科などの目が左側に寄っているものを「lefteye flounder」と呼ぶ。カレイ科のうち、オヒョウ類を特に「halibut」』(ハリバァット)『と呼ぶが、その区別はあいまいである。また、ウシノシタ科』(Cynoglossidae)『などに用いられる「sole」』(ソーォル:「靴の底」)『を名の一部に持つカレイ科の魚も少なくない』。『カレイ目には、カレイ科以外でも「〜カレイ」の名で呼ばれる種は多い。ヒラメ科のアラメガレイ、テンジクガレイ、メガレイ、ダルマガレイ科のダルマガレイ、トゲダルマガレイ、コウベダルマガレイ、ヤリガレイなど。これらはヒラメを参照。また、地方名ではウシノシタ科のクロウシノシタ』(イヌノシタ亜科タイワンシタビラメ属クロウシノシタ Paraplagusia japonica )『をスジガレイやニジリガレイなどと呼ぶ例もある』。以下、「主な種」の項であるが、本邦に棲息しない種はカットし、解説の一部も不要と見做したものはカットした。

   *

メイタガレイ(目痛鰈) Pleuronichthys lighti (Ridged-eye flounder)

30cm。北海道以南の日本沿岸、朝鮮半島沿岸、黄海、渤海、東シナ海。目の間に棘があり、「目痛」が語源とされる。関西では「本メイタ」と呼ばれ特に人気がある。

ナガレメイタガレイ(流目痛鰈) Pleuronichthys cornutus

メイタガレイに非常に似た外見を持つが、体が細目で、味はかなり落ちる。関西では「化けメイタ」と呼ばれる。

ヤナギムシガレイ(柳虫鰈) Glyptocephalus kitaharai (Willowy flounder)

30cm。北海道以南の日本沿岸、朝鮮半島沿岸、黄海、渤海、東シナ海。「若狭がれい」は若狭湾で獲れるヤナギムシガレイで、これを一夜干しにしたものが京都でよく食べられる「笹かれい」。以前はヤナギムシガレイ属(学名:Tanakius)に分類されていた。

ニシナメタガレイ Microstomus kitt (lemon sole)

北ヨーロッパの約200メートルの浅い岩礁に分布し、体長65cm、約3kgに成長する。

ババガレイ(婆鰈、別名:ナメタガレイ) Microstomus achne (Slime flounder)

60cmになる。中部日本沿岸以北、千島列島南部、樺太、日本海、黄海、渤海、東シナ海に分布。体表が、粘液を多く分泌するためぬるぬるしており、滑多鰈の呼び名がある。煮付など。東北、北陸の一部などでは、年越しにババガレイを食べるため、年末に市場価格が数倍に跳ね上がる。通年出回り大きな物は高価だが小さなものは安い。煮付け、塩焼き、干物にして非常に美味。

オヒョウ (大鮃) Hippoglossus stenolepis (Pacific halibut)

最大2.5m、350kgに達するカレイ科では最大の種。北太平洋に広く分布する。日本の東北地方以北、オホーツク海、ベーリング海、チュクチ海の南部、カリフォルニア半島からメキシコ沿岸まで。またハリバッド(halibut)という名前でも呼ばれておりゲームフィッシングのターゲットとされているらしい。

カラスガレイ (烏鰈) Reinhardtius hippoglossoides (Greenland halibut)

100cm以上。北部大西洋および北部太平洋の水深約200〜1,600 m (700〜5,200 ft)。底生魚。左目は成長と共に頭部右側に移動するが、カレイのように完全には移動せず、前方への視界も保持。表面は斑点のある褐色で、左側もやや薄い色だが白色ではない。カラスガレイ属は本種一種のみの単型属。

マツカワ (松川、松皮) Verasper moseri (Barfin flounder)

メスは、体長80cm、体重6kgになるものもある。太平洋北西部。日本の中北部沿岸(太平洋側、日本海側)からオホーツク海南部、樺太、千島列島まで。目のある側の鱗が大きくざらざらしており、松の樹皮のようであることから。背ビレと尻ビレに黒い縞状の紋が入る。水揚げ量が減少している。北海道では、えりも以西海域マツカワ資源回復計画を策定し種苗放流等に取り組んでいる。これに関連し、えりも以西栽培漁業振興推進協議会では、この海域で水揚げされる本種を「王鰈」と名付けた。また近年養殖も試みられている。

ホシガレイ (星鰈) Verasper variegatus (Spotted halibut)

60cm。太平洋北西部。日本中部、朝鮮半島沿岸、東シナ海まで。比較的暖かい海のカレイ。背ビレと尻ビレに黒い縞状の紋が入る。目のない側の表面、尾ビレの根元などに黒い斑点がある。水揚げ量が減少しており、珍重される。

ソウハチ(宗八) Cleisthenes pinetorum (Pointhead flounder)

太平洋北西部。日本中北部の近海。アカガレイ属に分類する説もある。

痛みが早いため鮮魚で出回ることはない。脂に独特の風味があり、干物に加工されることが多い。

アカガレイ (赤鰈) Hippoglossoides dubius (Flathead flounder)

45cmになる。太平洋北西部。オホーツク海、日本海などに分布。カムチャツカ半島から朝鮮半島、日本沿岸など。目のない側の体色が血がにじんだように赤みがかる。

ドロガレイ (泥鰈) Hippoglossoides robustus (Bering flounder)

30cmほど。北太平洋。北海道沿岸(オホーツク海)、アリューシャン列島、アラスカ付近まで。

アサバガレイ (浅羽鰈) Lepidopsetta mochigarei (Dusky sole)

40cmほど。太平洋北西部。オホーツク海南部から朝鮮半島、日本では本州北部以北の沿岸にかけて。マガレイ、マコガレイに似ている。

スナガレイ (砂鰈) Myzopsetta punctatissima (Sand flounder)

30cmほど。千島列島、オホーツク海南部から日本海北部(朝鮮半島、日本沿岸)にかけて分布。北海道、東北北部に水揚げされる。身が薄く、脂があまり乗らない。口が細長くとがっている。体高は高く体形が菱形。目のある側に砂粒のような細かい斑点がある。目のない側には背ビレ、尻ビレに沿って幅の広い黄色い帯がある。泳ぐ姿がまるで海底の砂を食べるように見えることからスナガレイの名称がついたという。また、カレイ類の中では最も価格が安い。

ヌマガレイ (沼鰈) Platichthys stellatus

30cm。カレイ科に属する数少ない眼が左側にある種。汽水域や淡水にも入ることがあるのでこの和名がついている。実際に、その名のとおり河川でも釣れる。

イシガレイ (石鰈) Platichthys bicoloratus (Stone flounder)

50cmほど。太平洋北西部。日本(北海道から九州西岸)、千島列島、樺太、朝鮮半島、中国、台湾。沿岸の海域。河川や湖沼などの汽水、淡水域まで侵入する。目のある側の背ビレ、尻ビレの根元に沿うように、骨片の突起が並ぶ。以前はイシガレイ属(学名:Kareius)に分類されていた。

マガレイ (真鰈) Pseudopleuronectes herzensteini (Littlemouth flounder)

最大50cmほどになる。他種より口が小さくとがっており、クチボソなどの別名がある。太平洋北西部。千島列島、樺太、沿海州から、黄海、渤海、朝鮮半島沿岸、日本沿岸、東シナ海中部まで分布。日本では北海道、本州沿岸、瀬戸内海など。水揚げ量が多い。

クロガレイ (黒鰈) Pseudopleuronectes obscurus

クロガシラガレイとよく似ており、区別せずに扱われることが多い。

クロガシラガレイ (黒頭鰈) Pseudopleuronectes schrenki (Cresthead flounder)

最大50cmほどになる。太平洋北西部。千島列島、オホーツク海南部から、日本の北部(北海道や青森県)の沿岸、日本海の朝鮮半島東岸まで。クロガシラとも呼ばれる。クロガレイとよく似ており、クロガレイと呼ばれることも多い。北海道では釣りの対象として人気が高い。

マコガレイ (真子鰈) Pseudopleuronectes yokohamae (Marbled flounder)

最大45cm程度。太平洋北西部。北海道南岸以南の日本沿岸、瀬戸内海、朝鮮半島沿岸、黄海、渤海、東シナ海北部まで。水揚げ量が多い。

「城下かれい」(しろしたかれい)はマコガレイの地方名で、大分県日出町沿岸で獲れるもののこと。特においしいとされ、高値で取引されるブランド魚である。

   *

以下、「利用」の項(一部をカットした)。『ほぼ全ての種が食用になり、日本では、刺身 (新鮮な物に限る)、寿司、煮付け、焼き物、揚げ物などさまざまな料理に用いられる。また、冬のカレイ、特に産卵前の時期のメスは大きな卵巣をもっており、子持ちガレイと呼ばれ、甘辛く煮付けたものが日本の冬の味覚として好まれる。干物、特に一夜干しもよく行われる。日本料理では多くの場合、魚の頭を左に配膳するのに対し、頭を右に配膳する珍しい魚でもある。中華料理では、唐揚げ、蒸し魚、煮魚などとして食べられている。またソウハチ、ババガレイの干物は数ある魚類の干物の中でも非常に美味である』。『京都市では福井県の若狭地方で水揚げされて一夜干しにされた笹かれいが、京都を代表する食材の一つとなっている』。『カレイは人気の高い食用魚であるが、寿命が長い分、成長が遅く、大きく育てるには長い年月が必要であるため、養殖に適しているとは言いがたい。そのため、出荷サイズまでの養殖はほとんど行われていないが、親魚から採取した卵を孵化させ、稚魚になるまで育ててから放流する試みが行われ、種類によっては一定の成果を得ている。特に市場価値の高いマツカワなどは2000年代から養殖も行われている』。以下、最後の「アレルギー」の項。『子持ちカレイに強いアレルギーをもつ人がいる。これはカレイの魚卵蛋白に由来する抗原によるアレルギーで、蕁麻疹やアナフィラキシーを起こす。この子持ちカレイのアレルギーは、牛肉や豚肉にも交差反応を起こすことが知られ、高い確率で牛肉や豚肉の摂取によってもアレルギー反応を起こす』。但し、『AB型やB型の血液型の人には』、『これらのアレルギー症状をもつ比率が極めて低いことが知られる。これらのアレルギーの原因は、過去にマダニ』(真蜱:節足動物門鋏角亜門クモ綱 Parasitiformes 上目ダニ目Acari/マダニ目 Ixodidaマダニ上科マダニ科 Ixodidae)『に噛まれたことにより、マダニの唾液腺に存在するgalactose-α-1, 3-galactose(以下α-gal)によって対象者の免疫が感作されたことが原因であると推測されている。なお、このα-galに対してアレルギー(α-galアレルギー)を持つ人は、上記の子持ちカレイや牛肉、豚肉の他、セツキシマブ』(Cetuximab:上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)に結合して、その働きを阻害するモノクローナル抗体(monoclonal antibody/mAb/moAb:単一の抗体産生細胞をクローニングして作られた抗体))『にもアレルギーを呈する(セツキシマブの分子構造にα-galが存在するため)』とある。この最後のアレルギーは、私も迂闊にして、知らなかったのでオロロイた。私はB型であるが、子持ちカレイが好物である。発症したことはないので、安心した。

『「倭名鈔」には『王餘魚(わうよぎよ)』を『加禮比(かれひ)』と訓(くん)し』国立国会図書館デジタルコレクションの寛文七(一六六七)年板の「卷十九」の「鱗介部第三十」・「龍魚類第二百三十六」の当該部(右丁二行目以降)を視認して推定訓読する。

   *

王餘魚(かれい) 「朱厓記」に云はく、『南海に王餘魚(わうよぎよ)有り【和名「加良衣比(からいひ)」、俗に云ふ「加禮比」。】。昔、越王、鱠(なます)に作り、盡(つく)さず、餘(よ)、半(なかば)、水に棄(す)つ。因(より)て、半身(はんみ)を以(もつ)て、魚(うを)と爲(な)る。故(ゆゑ)、「王餘魚」と曰ふなり。』と。

   *

この「朱厓記」は、後に出るが、河原田氏は以上を受けて言ったもので、原本に当たったのではない。何故なら、これは中国で、古い時代について記された遠く昔に失われた逸書だからである。こういうやり口も、極めて、気に食わないね、河原田!

『「閩書」に『比目魚(ひもくぎよ)』とし』ここから後も、実は、人見必大の「本朝食鑑」の「卷十二」の末尾にある「中華異同」の「鰈」からの河原田の孫引きなのである!! 国立国会図書館デジタルコレクションの元禄一〇(一六九七)年板の当該画像を視認して推定訓読する。

   *

   鰈(かれひ)

鰈(かれひ)と比目(ひらめ)、本(もと)、同類なり。今(い)ま、本邦、二名を以つて、之を分(わか)つ。氣味・形色の異(い)、有り。李時珍、一物の者と爲すは、未だ、詳(つまびらか)ならず。「閩書南産志(びんじよなんざんし)」に曰はく、『鰈魦魚(てうせさぎよ)、漯沙(たふさ)と名づく。音(おん)は、撻(タツ)。魚、江(こう)に在り、行くこと、漯漯(たふたふ)[やぶちゃん注:「集まる」の形容。]たり。又、占沙(せんさ)と名づく。今、閩(びん)[やぶちゃん注:現在の福建省を中心とした地方。]・広(かう)[やぶちゃん注:現在の広東省地方。]、此の魚(うを)を以つて、比目(ひめ)と名づく。』と。比目、又、一魚(いちぎよ)なることを知らざるなり。按ずるに、比目、諸書、倶(とも)に『「比」は「並(ならぶ)」、魚、各(おのおの)、一目(いちもく)を相並(あひならび)て、行くなり。』と言ふ。是れ、未だ、解し得ず。細(こまか)に魚の形を視(み)れば、則ち、黒きを表(おもて)と爲(な)し、白きを裏と爲す。其の黒き𠙚(ところ)、頭中(とうちゆう)に兩眼(りやうがん)、有り。相並(あひなら)ぶこと、甚(はなは)だ、邇(ちか)し。然らば、則(すなはち)、他魚(たぎよ)の相並びて行くに非ざるなり。大抵、此の魚、名義(めいぎ)、多し。「上林賦(じやうりんふ)」の、之を『魼(きよ)』と謂ふ。『相胠(あひきよ)する』と、なり。「呉都賦」に、之を『魪(かい)』と謂ふ。『相介(あひたす)くるなり。段公路(だんこうろ)が「北戶錄」に、之を『鰜』、《音、》『兼』と謂ふなり。「臨海志」に『婢𥱰(ひし)』と名(なづ)く。「臨海風土記」は『奴屩(どきやう)』と名く。宋の沈懐遠(しんくわいゑん)が「南越志」に、『版魚(はんぎよ)』と名づく。房千里(ばうせんり)が「南方異物志」、『箬葉(じやくえふ)』と名づく。皆、『形(かたち)』に因(より)てなり。

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以上の引用に出る書籍は、総て、知っているものを除いて、作者・年代を総て確認した。全部が古い中国の書である。本来ならば、今まで通り、注するのだが、正直、河原田氏のやり口に、かなり、怒髪天を衝く思いをしているのだ! それに加えて、自宅の水道が洩れていることが三日前に発覚、イライラが波状的に続いている。そこで、流暢な注など、本当は出来ない状況にさえ、ある。されば、これで、お許しあれかし。なお、せめても、私の二〇二〇年に公開した「大和本草卷之十三 魚之下 比目魚(カレイ) (カレイ・ヒラメ・シタビラメ)」を参照して戴けると、多少はお慰めになろうかとも思う。

石蝶(いしかれい[やぶちゃん注:ママ。以下、多くあるが、ママ注記は附さない。])』といふ。六、七寸に過(すぎ)ず。形(かた)ち、尋常の小蝶(こかれい)に比(ひ)すれば、狹少(けうしよう[やぶちゃん注:ママ。「けふせう」が正しい。])にして、肉、薄く、卵(たまご)、腹(はら)に滿(み[やぶちゃん注:ママ。「みつ」の脱字。])るといへども、味(あじわ)ひ、佳(か)ならす[やぶちゃん注:ママ。濁点落ち。]。『藻蝶(もかれい)』、又、『霜月蝶(すもつきかれい)』といふ。形、略(ほ)ぼ、同じ表裏(おもてうら)、あり。鱗(うろこ)なきもの、號(なづ)けて『雌板蝶(《め》いたひらめ[やぶちゃん注:ママ。後注する。])』といふ。又、『片口蝶(かたくちかれい)』といふものあり。其(その)表裏(ひようり[やぶちゃん注:ママ。])、相反(あいはん[やぶちゃん注:ママ。])するものを『平目(ひらめ)』といふ。大なるもの、二、三尺許(ばかり)に至る。]

 

 此ものは、鱠(なます)、羹(あつもの)、煑食(にくひ)、炙食(あぶりぐひ)、蒲鉾(かまぼこ)等(とう)、種々(しゆじゆ)の割烹(りやうり[やぶちゃん注:意訓。])にも供せり。乾製に種々あり。蒸蝶(むしかれい)は若狹・越前等(とう)より出(いだ)すものを上好(じようかう[やぶちゃん注:ママ。])とす。其法、鮮蝶(なまかれい)、多子(たし)のもの[やぶちゃん注:多くの卵を持った個体。]を採りて、䀋水(しほみづ)を以て、之を、蒸(む)す。半熟ならしめて、取出(とりいだ)し、陰乾(かげほし)すること數月(すげつ)にて貯(たくわ[やぶちゃん注:ママ。])ふ。乾蝶ハ、尋常、乾脯(かんほ)にして、和泉(いづみ)・紀伊等(とう)の產を、著名とす。『木葉蝶(このはかれい)』は、長さ、寸餘の者を哺(ほ)[やぶちゃん注:ママ。「脯」の誤植。]となす。是れ和泉・紀伊・下總(しもうさ[やぶちゃん注:ママ。歴史的仮名遣は「しもふさ」。])等の珍品(ちんひん)なり。和泉より出(いだ)すものを、名を『岡田鰈(をかだかれい)』といふ。

[やぶちゃん注:「木葉蝶(このはかれい)」「デジタル大辞泉」の「このは‐がれい〔‐がれひ〕【木の葉×鰈】」に『1 メイタガレイの別名』、『2 小さなカレイを重ね合うように並べて干したもの。ささのはがれい。あしのはがれい。』とある。

「岡田鰈(をかだかれい)」「泉南市」及び「泉南市泉南市商工会」が作っている「泉南市観光ガイド 恋するせんなん」の「里外神社」(りげじんじゃ)に、『里外神社(りげじんじゃ)は、仁徳天皇(在位313-399年)の代に呉服(くれは)大明神を産土神として創立された社です。呉服大明神は、大阪池田市の呉服神社(くれはじんじゃ)に祀られている事でも知られている、呉の国から渡来し日本に機織(はたおり)技術を伝えたとされる織姫で、「機織」の守り神として崇敬されています』。『また、境内に残る王餘魚淵(かれいがぶち)には、後鳥羽上皇に献上した「岡田ガレイ」が飼育されていたといわれています。現在のご祭神は素戔嗚尊(スサノオのミコト)です』とあり、さらに「後鳥羽上皇の岡田ガレイ」に、『建仁元年(1201年)10月、後鳥羽院が熊野行幸の折、岡田カレイに興味をもたれたので、里外神社境内にある池で飼育していたカレイを捕らえ献上したところ大変喜ばれ、この淵を王餘魚淵(かれいがふち)と名づけられました。その後は行幸のたびに王餘魚淵で飼育したカレイを献上してもらうのが通例になったということです』とあった。里外神社は泉南市岡田のここにある(グーグル・マップ)。サイド・パネルの説明板の写真にも終わりの方に、記載がある。]

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