改版「風は草木にささやいた」異同検証 「Ⅹ」パート / 改版「風は草木にささやいた」異同検証~了
Ⅹ
[やぶちゃん注:「生みのくるしみの頌榮」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「あかんぼ」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「風景」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「疾風の詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「友におくる詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「自分はいまこそ言はう」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「步行」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「家族」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「薄暮の祈り」は異同なし。]
[やぶちゃん注:初版でここに配されてある、土田杏村のあの長々とした五月蠅い跋文は改版には存在しない。]
後より來る者におくる
子ども等よ
鐵のやうに頑丈であれ
やがて君達のお父さんがお爺さんのやうになる時
其時、君等はお父さんのやうな大人になるのだ
此の時代と世界とを
そして立派にうけ繼ぐのだ
その君達のことを思へば
此の胸はうれしさで一ぱいになるぞ
おお勇敢な小獅子よ
お爺さんよりお父さんより
君等はもつとどんなに強くなることか
こつちをみろ
子ども等よ
いまは頭も白髮となり
骨が皮をかぶつたやうな體軀を
漸く杖でささへて
消えかかつた火のやうに生きてゐるお前達のお爺さんを見な
あれでも昔は若くつて大膽で
君等のお父さん達が
いま鍬鎌を振りまはして田圃や畑でたたかつてゐるやうに
弓矢銃丸(やだま)の間をくぐりむぐつて
いさましいはたらきをしたもんだ
[やぶちゃん注:後詩「後より來る者におくる」は驚くべき変更が施されてある。初版の後半部と前半部を完全に入れ替え、しかも一連構成を二連構成へと改稿しているのである。なお、その他、三箇所に施されてあったルビが除去されてもいる。個人的にはしかし、この順序ではコーダを感じさせない。敢えてコーダを外したのは山村暮鳥の確信犯なのだろうが、残念ながら、私は改版の、この改稿は全く支持出来ない。]
[やぶちゃん注:初版では最後の最後にこの以下に献辞があるが(「後より來る者におくる」の最後に附加してある)、改版にはない。]
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以上を以って私は私の「山村暮鳥全詩」を私なりに納得行く形で完成し得たと考えている。
――この仕儀総てを亡き母聖子テレジアに捧げる――